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2008-06-12(Thu) [長年日記]

_ J・P・ホーガンもアッチに行ってしまいました──『揺籃の星』

揺籃の星 上 (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン/内田 昌之
東京創元社
¥ 840

揺籃の星 下 (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン/内田 昌之
東京創元社
¥ 882

本が好き!経由でシリーズ第2弾『黎明の星』を献本して頂いたので、長らく積ん読になっていた本書を引っ張り出してきて読了。

なぜ、ずっと積ん読になっていたかというと、金子隆一氏の解説が本書のトンデモ具合をこれでもかといわんばかりに強調していたため、恐れをなしてしまったからなんですな。

で、実際に読んでみたの感想。

……やっぱり、トンデモでした!!

土星の衛星に移住し科学者のユートピアを建設したクロニア人が地球を訪れ、「金星は木星から飛び出してできたんだよ! 地球も土星の衛星だったんだよ!!」とぶち上げる。 しかし、世界は

ΩΩΩナンダッテー

とはならず、まったく取り合わない。 クロニア人と古くから付き合い、その理論を信じる主人公は奮闘するも逆に世間の疑惑を深めるばかり。 そんな時、木星から分離し彗星と化したアテナが地球に影響を与えるほど接近することが判明する──というのが本書の骨子。

元ネタになったヴェリコフスキーの『衝突する宇宙』については、「と学界の本で読んだかも」くらいのことしか覚えていないのだが、そのトンデモなさは解説を読めば一発で分かる代物。 なんで、こんなトンデモ本を題材に使うかなー。 > ホーガン

ホーガンがデビュー作『星を継ぐもの』からずっと科学的な整合性よりも「センス・オブ・ワンダー」を優先する作風なのは承知していたが、「宗教は害悪だ」とでも言わんばかりの強烈な科学第一主義はそれなりに好きだった。 しかし、本作で展開される理論となると、科学というよりは『神々の指紋』や飛鳥昭雄のショックサイエンス、MMRの人たちに限りなく近い、オカルトや新興宗教に限りなく近いものだ。

いや、「ウソと分かりつつ大ボラを吹く」という態度ならいいのだ、別に。 だが、どうも本作を読んでいる限り、ホーガンはこの理論をある程度信じちゃっているようなのだ。 そうなると、「あぁ、ホーガンもアッチに行っちゃったのね」とちょっと悲しくなってしまう。

そんな訳で心情的には受け入れ難い作品なのだが、それでも後半から加速するジェットコースター・ストーリーにはぐいぐい引っ張られまくってしまった。 やっぱり、ホーガンのストーリーテリングの妙はすげぇーなーと感心した次第。

アテナ接近にともないバシバシ発生する天変地異の数々に、人はゴンゴン死ぬわ、都市は壊滅するわ、国家という枠組みは崩壊するわ、暴徒と化した難民は暴れまくるわで、パニック小説が好きな向きには特に楽しめるのではないかと思う。 まぁ、個人的には巨視的なカタストロフィ描写が好きなので、主人公べったりなミクロな視点の描写ばかりなのは、少し物足りなくもないが。

つづけて読む『黎明の星』がどういう展開になるのか。 怖い反面、ちょっと期待。