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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-05-31(Sat) [長年日記]

_ スウェーデンの深い闇を抉る傑作ミステリー──タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)(ヘニング マンケル/Henning Mankell/柳沢 由実子)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

スウェーデンの作家ヘニング・マンケルによる長篇ミステリーが本書。

舞台がスウェーデンということで、先日読んだ仏ミステリー・シリーズ(『死者を起こせ』『論理は右手に』)以上に馴染みのない地名がバシバシ登場するが、そんなこともなんのその、ぐいぐい引っ張られて一気読みしてしまった。 今年上半期のオレ的ミステリー部門で1位間違いなしの傑作だ。

本書の主人公は、37歳の警官ステファン・リンデマン。 舌ガンの告知を受けた彼はふと目にした新聞記事で、かつて指導を受けたことがある警官ヘルベルト・モリーンが惨殺されたことを知る。 ヘルベルトは警官を退職した後、スウェーデン北方のヘリェダーレンで、なにかから隠れるようにひっそりと生活を送っていた。 彼はいったい、なにを恐れていたのか? 治療開始を前に休暇を取ったステファンはガンの恐怖から逃れるため、ヘリェダーレンを訪れ、独自の捜査を開始する。 死の予感に怯えつつ、真実を探り出そうとするステファンの前に立ち上がるのは、ヘルベルトの知られざる過去と歴史の巨大な闇だった──。

本書の意外な点は、ヘルベルト・モリーン殺しの犯人と殺人の理由がストーリーの初盤で明らかになることだ。 そのようなストーリーであれば、警察と犯人の知略ゲーム的な展開になるのが、普通ではないかと思うのだが、本書ではその犯人さえ関知しない第二の殺人が起きてしまう。 ストーリーは、ステファンと地元警察、そして、ヘルベルト殺しの犯人による第二の犯人探しにシフトしていくのだ。

とはいえ、本書のメインテーマは犯人探しにあるのではない。 スウェーデンの社会の暗部に今も脈々と生き続けるナチスの思想の存在を浮き彫りにすることなのである。

スウェーデンについては『北欧空戦史』『中立国の戦い』などで、強大なドイツにある程度の譲歩を強いられながらも中立政策を保ち、また根本では反ナチスでレジスタンス活動の支援も行なっていた、というイメージを持っていたので衝撃を受けた。

本書は警察小説であり、犯罪小説であり、アジアと同じく第二次世界大戦の傷跡がヨーロッパの人々の間に、いまだに残ることを認識させる社会小説である。

イチオシ。


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書評/ミステリ・サスペンス

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