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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-05-07(Wed) [長年日記]

_ 20世紀初頭のアメリカ農村部での暮らしを生き生きと描く──ホーミニ・リッジ学校の奇跡! (sogen bookland)(リチャード ペック/Richard Peck/斎藤 倫子)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

インディアナ州の片田舎の学校を舞台にしたヤングアダルト作品が本書。

ティーンエイジャー向けとちょっと軽く見て読みはじめた本書だが、傑作の太鼓判が押せる良作品で思わぬ拾い物(というのは作者に失礼か)。 年齢にかかわらず楽しめること請け合いの一冊だ。

本書の語り手は勉強嫌いの15歳の少年ラッセル。 弟のロイドとともに父の農業を手伝う良い少年なのだが、学校がいやで仕方がない。 学校なんかやめてダコタで一刻も早く働きたいといつも夢見ている。 夏休みも終わる頃となり、ラッセルは憂鬱な日々を送っていた。 そんな彼のもとにニュースが飛び込んでくる。大嫌いなオールドミスの教師、マート先生が急死したというのだ。教師が1人しかいない(ついでに書けば、教室も1つ)のホーミニ・リッジ学校もこれで閉鎖されると大喜びするのだが、その期待も虚しく、臨時の代理教師が雇われることになった。 その代理教師こそ、彼が最も苦手とする人間の一人、姉タンジーだったのだ──。

17歳の教師タンジーと、6歳から20歳(教師より年上!)のあまりにも個性的すぎる生徒たちが織り成すドタバタ劇が展開されるのだが、もうはっきりいってメチャクチャ。

たとえば、主人公ラッセルは馬車の鞭をタバコ代わりに吸った際(!)の火の不始末でトイレを燃やすわ、パイプの掃除をしようとしてストーブに火薬を放り込み教室ごと吹き飛ばしそうになるわの失敗をやらかすし、 教師であるタンジーにしてから、学校を存続させるため自ら生徒のリクルートに出掛けるわ、苦手な算数の授業をはじめようとして生徒から「やめたほうがいいです」とツッコミを入れられるわ、といった具合なのだ。

ドタバタ劇も楽しいのだが、本書を傑作たらしめているのは、学校生活とともに20世紀初頭のアメリカ農村部での暮らしが活写されている点だ。 年に一度、蒸気機関車で訪れる鋼鉄製の脱穀機のセールスショーに近隣の男たちが集まり、初めて見るレーシングカーに目を見張り、豚を屠畜して近所の人たちにふるまう──まるで見て来たかのようにそんな様子が生き生きと描かれている。

訳者あとがきによれば、作者でリチャード・ペックが自身の作品の舞台として好んで20世紀初頭を取り上げるのは、その時代を知らない子供たちへの教育的側面もあるようだ。 考えてみれば、日本の約100年前がどんな様子だったか想像しろと言われても、きちんと思い浮かべることが出来ないのであるから、まぁ、当たり前といえば当たり前。

教育的側面といえば、「なぜ勉強をする必要があるのか」という問いにも本書は答えている。 読書の興を削ぐので詳しくは述べないが、決して押し付けがましくないところは作者の持ち味なのだろう。

しかし、だからといって浅い訳ではない。 村の鼻つまみ者一家の長男が勉強について語る、

自分自身を高めようとしない連中は、ほかの人間が自分を高めようとするのをいやがる。(p.229)

という言葉には、大人の読み手であってもはっとさせられるはずだ。

ラストで明かされるタンジーと生徒たちの「その後」も爽やかな読後感を残してくれる。

作者リチャード・ペックは優れた児童文学に贈られるニューベリー賞を受賞した作家であるが、本書でも〈2005年度優秀ヤングアダルト図書〉および〈2005年度の傑出した児童文学作品〉に選出されたとのこと。 それも納得の一冊だ。


ホーミニ・リッジ学校の奇跡!

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書評/海外純文学

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