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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-04-09(Wed) [長年日記]

_ 化石の発掘も苦難の連続──フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ (DOJIN選書 14)(長谷川 善和)

化学同人様より本が好き!経由で献本御礼。

恐竜図鑑を読んだことがあれば、フタバスズキリュウの名前が記憶にある人も多いのではないだろうか。 1968年に福島県いわき市の高校生、鈴木直少年によって見付けられたこのクビナガリュウの化石は、その後日本中に化石ブームを巻き起こし、『ドラえもん のび太の恐竜』が生まれる切っ掛けとなった。 国立科学博物館に展示されている復元骨格を目にした人もいるだろう。

しかし、フタバスズキリュウがエラスモサウルス類の新属新種であることが論文に発表され、学名フタバサウルス・スズキイがつけられたのが、つい最近の2006年だったということを知る人は少ないのではないかと思う。 なんと発見から実に40年の時が流れていたのだ。

鈴木少年から化石発見の第一報を受け取り、それが恐竜に化石であることを確認した著者が、フタバスズキリュウの発掘から復元、種の同定までの軌跡を描いたノンフィクションが本書。 第一線でフタバスズキリュウに関わった著者ならではの臨場感溢れる内容で興味深く読める本だ。

本書を読んで驚かされるのが、いかに発掘が大変な作業の連続であるかということだ。 もちろん、脆く崩れやすい化石をできる限り原型のまま掘り出すという技術的な問題もそうではあるのだが、その前段階のいわゆる「政治」レベルにおいても様々な手腕が必要とされるのだ。

フタバスズキリュウの発掘に関して言うならば、なによりもまず費用をどこから得るかの問題があった。 なんと、本格的な発掘に入る前の第一次発掘については、著者たちが勤める国立科学博物館からは費用が出ず、地元の石屋さんを雇っての発掘費用や旅費等は自腹を切っていたとのこと。 第二次発掘についても、博物館の予算では足りず、国の補助金も得ることができず、朝日新聞の後援によりなんとか実現できたというのが実情らしい。

資金の目処がついた後も、発掘現場は生活道路が走る崖の下ということで地元の土木事務所との折衝を行なって工事の規模を決定し、 日本初の本格的な化石発掘で注目を浴びるがゆえのマスコミ対策を行ない、 化石を持ち帰ったことが原因によって祟りが起きては困るという地元の人を安心させるための御祓いを催し、 さらには盗難しようとする不届きな輩から化石を守りと、発掘以前の作業が山積みなのである。

無事発掘を終えたら終えたで(著者は明言していないが、後援者への義理を果たすためだろう)突貫工事で化石のクリーニング作業を行なって展示場となる百貨店巡りをするあたり「研究者も大変だなぁ」と思わずにはいられない。

冒頭に述べたフタバスズキリュウの同定が遅れた原因であるが、エラスモサウルス類の研究例が少なかったことに加えて、日本の研究機関の宿痾とでも言うべき、人材および資金不足のためのようである。

発掘記とともに本書では、そうであったに違いないと考えられているクビナガリュウの様々な生態について述べられている。 詳しい内容は本書に譲るが、その中でも個人的に一番興味深かったのが、クビナガリュウの化石の周りで見付かることが多いという石の話。 フタバスズキリュウの周辺でも見付かったそれはクビナガリュウたちが深く潜るため、飲み込んだり吐き出したりしてバラスト代わりに使っていた可能性があるという。 なんとも面白い。

私のようなUMA(未確認動物)のためのボーナストラックなのか、ネッシーやニュージーランド沖合いで日本のトロール船が引き上げた謎の腐乱死体(それとシーラカンス)に一章を当てているのも嬉しいところだ。 ただ、著者の見解はこれらのUMAの存在については、ほぼ完全否定というものなので、あまり盛り上がらないが。 まぁ、ネッシーや謎の腐乱死体については、昔から懐疑的な意見が多いので、さもありなんという感じではある。

全193ページとそれほどページ数が多くないため、多少あっさり気味な印象を受ける本書だが、逆にいえば恐竜マニアならずとも面白く読める、程良い「濃さ」の一冊だ。


フタバスズキリュウ発掘物語

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書評/歴史・時代(F)

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