最新 追記

ぽっぺん日記@karashi.org


2008-04-01(Tue) [長年日記] この日を編集

_ 「警告」などという生ちょろいものではなく、「神話」や「黙示録」として捉えられるべき一冊──クラッシュ (創元SF文庫)(J.G. バラード/J.G. Ballard/柳下 毅一郎)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

J・G・バラードの代表作のひとつであり、鬼才デヴィッド・クローネンバーグが映画化したことでも有名な作品が本書。

ついていけないなぁというのが正直な感想だが、それでもなお傑作と評さざるを得ない一作だ。

本書の主人公は、著者と同じ名前を持つテレビCMディレクター、バラード。 彼は雨上がりの道でスリップをさせ、対向車と正面衝突事故を起こす。 その事故の結果、運転手を死亡させ、その妻である女医に重傷を負わせてしまう。 自らも傷を負ったバラードは、車の衝突で得るエクスタシーに固執する謎の男ヴォーンにつきまとわれる。 ヴォーンに影響を受けはじめたバラードは、妻とともに徐々に衝突事故と性的絶頂の悪夢的世界に捕われていく──というのが本書の骨子だ。

本書について、著者のバラードは「毎年何十万もの人を殺し、何百万人もの人を傷つけている災害」である自動車事故をモチーフにした「現在の災害小説」と位置付け、

究極の役割は警告にある。(p.12)

と述べている。もちろん、それは「交通安全」云々などという話ではなく、人間とテクノロジーの関係に対する警告なのだろう。

しかし、率直に言って、本書を読んでも、その警告についてはぴんとこなかった。 本書が書かれた1973年と現代とでは、一口にテクノロジーといっても、その意味合いは大幅に異なっている。 少なくとも、自動車という、我々の周りにあまりにも溢れ過ぎて「日用品」と化したガジェットを通した「警告」は、その意味を些か減じているとしか感じられない。

では、本書は変態的な嗜好ばかりがクローズアップされた、ただの古びたポルノ小説なのか。

そうではない。 それは訳者あとがきを読めば一目瞭然だろう。 パパラッチから逃れるため、猛スピードで車を飛ばし、パリの地下トンネルで大富豪と共に事故死を遂げたダイアナ元皇太子妃。 これは本書が提示する悪夢的な世界に他ならない。 「警告」などという生ちょろいものではなく、「神話」や「黙示録」として捉えられるべきものが本書なのだ。

本書の内容で一番印象に残ったのは、ヴォーンから受け取ったLSDをキメた主人公が一体感を感じつつ、車を駆る箇所だ。 そのシーンを読んで思い出したのが、神林長平の『魂の駆動体』である。 遠未来の地球において、翼人が太古に繁栄した人類の乗り物である「クルマ」を一枚の設計図から作り出すというというストーリーのこの作品は、人間と車が一体となって駆ける姿を爽やかに描き出している。

受ける印象がまったく違う2冊であるが、人間と車の関係という面から見れば、「生」の側からその関係を見たものが『魂の駆動体』であり、「死」の側から見たものが本書『クラッシュ』と言えるのではないかと思う。 そして、本作は「死」をターゲットしたがために、その正反対の事象である「生」に密接に関わった「性」と結びつき、ポルノグラフィーという形態になったのではないだろうか。

本書を気に入るかどうかは読み手次第ではある。 どこをどう読んでもポルノ小説であるし、全篇に渡って、性器がばんばん登場し、精液やらなんらやの体液が飛び散っていて、お世辞にも上品とはいえない内容だ。 しかし、たとえ気に入らずとも、読んで損のないことは間違いない一冊である。


クラッシュ

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書評/SF&ファンタジー


魂の駆動体 (ハヤカワ文庫JA) 魂の駆動体 (ハヤカワ文庫JA)
神林 長平
早川書房
¥ 903

_ メモ

  • PC入った鞄を肩から掛けて外周りの毎日なので肩が凝りまくり。
  • 読書は『司政官』が1/3、『幽霊狩人カーナッキの事件簿』が1/2。
  • Perlの勉強で『実用Perlプログラミング』(黒ヒョウ本)を読んでいるけど、いいね、これ。
  • 近所(と言っても、車で30分くらい)にコストコが出来るんだけど、4/3までに会員証をつくりに行けば1000円引きらしい。もう日にちがないので行けんなー。

2008-04-03(Thu) [長年日記] この日を編集

_ Mozilla Firefox 3 Beta 5を使ってみた

とはいっても、いきなり入れ替えるのは怖いので、Mozilla Firefox Portable Edition

これはいい。Beta 4で使えた拡張は、Adblock Plus以外、今のところ動いているし 全部動いたし、 Beta 4だとレイアウトが崩れまくったAutoPagerizeがきちんと動くようになったのも素晴しい。

結構落ちやすかったBeta 4の挙動が改善されていれば、さらに嬉しいんだけど、まぁ、そっちはもうちょっと使ってみないと分からない。

参考までに、Beta 5で使っている拡張は列挙(リンクはメンドいので略。ごめんね)。

  • Adblock Plus 0.7.5.3+200804021
  • Firebug 1.1.0b11
  • FireGestures 1.1b2
  • FoxyProxy 2.7.2
  • Gmail Notifier 0.6.3.2
  • Greasemonky 0.7.20080121.0
  • It's All Text! 0.8.4
  • Make Link 3.0.2
  • RefControl 0.1f
  • Tab Mix Plus 0.3.6.1.080325a
  • Tombloo 0.1.4
  • Weave 0.1.29

2008/4/6追記

Adblock Plusも動いたので追記した。

_ 古典的ゴーストハンターが訳も新たに復活!──幽霊狩人カーナッキの事件簿 (創元推理文庫)(W.H. ホジスン/W.H. Hodgson/夏来 健次)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

20世紀初頭の英国人作家、ウィリアム・ホープ・ホジスンによるオカルト探偵トマス・カーナッキを主人公にした怪奇小説連作集が本書。

『幽霊狩人カーナッキ』といえば、ホラー全盛期だった1994年に角川ホラー文庫の1冊として刊行されたことが記憶に残っている。 ホラーにハマっていた当時、本屋で同書を見掛けたが、文庫1冊を買うのにも逡巡しないといけないような財政状況だったため(要は貧乏学生だった訳ですな)、泣く泣く買うことを諦めたことがあった。 あれから14年を経て、訳を新たにするとともに本邦初訳の一篇を加えられ、創元推理文庫に収められた本書を読めることを喜びたい。

オカルト探偵であるカーナッキが、夕食に招待した友人たちに、自分が依頼された数々の怪事件とその顛末を披露していく、というのが本書に収められた作品の骨子。

本シリーズのユニークなところは、カーナッキがオカルト知識とともにカメラや〈電気式五芒星〉などのテクノロジーを併用する点だろう。 小説やコミック、映画、ゲームなどジャンルを問わず、現在のゴーストハントものでも、ゴーストハンターがオカルトとテクノロジーを活用する展開がよく見られるが、カーナッキはそんなゴーストハンターたちの走りと言ってもいいのではないかと思う。

また、カーナッキの人物造形もユニークだ。 この手の主人公といえば、どんな怪奇現象にも動じず、果敢に立ち向かうのがよく見られる姿であるが、カーナッキは怪奇現象に震えて動けなくなってしまうなんてことはざら、さらには恐怖のあまり逃げ出した一般人と一緒に逃げ出してしまうなんてこともしてしまって、なかなか親しみが持てるキャラクターになっている。 自分が話すだけ話した後は、友人たちを追い出してしまうあたりも素敵だ。

ちなみに、読み手の興を削ぐので、どれとは書かないが、カーナッキ先生がまんまと騙されてしまう、思わずニヤニヤしてしまう作品も収録されています。

訳者あとがきでも指摘されているように、クトゥルフ神話の祖であるH・P・ラヴクラフトのホラー作品を読んだことがある読者であれば、 作中に一本通った科学を尊重する合理的精神、 カーナッキが言及する『シグザンド写本』や『サアアマアア典儀』とクトゥルフ神話に登場する『ネクロノミコン』や『屍食教典儀』といった魔導書を代表とする独自のオカルト大系など、 本シリーズとの相似性に気付くに違いない。 事実、ラヴクラフトは評論「文学と超自然的恐怖」において、著者ホジスンを知られざる注目すべき作家としている。

残念ながら、ホジスンは第一次世界大戦に出征し戦死を遂げたため、ラヴクラフトと面識を持つことはなかったそうだが、もし、この二人の間に交流があれば、ホジスン作のクトゥルフ神話作品が書かれたかもしれないと想像すると楽しい。

なお、〈黒い帳〉事件や〈呪いの毛皮〉事件、〈蠢く扉〉事件など、作中でカーナッキが仄めかす語らざる事件は、後年、現代の作家たちによって創作されたとのことである(No. 472 Cheyne Walk: Carnacki the Untold Stories(A. F. Kidd/Rick Kennett))。 この機会に、ぜひ、そちらの邦訳をお願いしたいところだ。 どうでしょう? > 東京創元社様

最後に、あとがきで訳者が出しているクイズの答え。

※答えが知りたくない人は、ここから先は読まないでください!

1

2

3

4

5

6

7

8

9

p.157


幽霊狩人カーナッキの事件簿

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書評/ミステリ・サスペンス


2008-04-05(Sat) [長年日記] この日を編集

_ 円城塔にしては読みやすい短篇集──オブ・ザ・ベースボール(円城 塔) オブ・ザ・ベースボール(円城 塔)

円城塔の短篇集。円城塔にしては読みやすいな、という感じの一冊。

本書に収められているのは、下記の2篇。

  • 「オブ・ザ・ベースボール」
  • 「つぎの著者につづく」

「オブ・ザ・ベースボール」は、1年に1度くらいの頻度で空から人が降ってくる町のレスキュー・チームの話。 レスキューといっても、隊員の装備はユニフォームにバットのみで、方法も落下してきた人を天に打ち返すっていうんだから、まったく人命救助になっていないのがおかしい。

本作は芥川賞候補作になったということだが、『Self-Reference ENGINE』あたりと比較すると、断然、読みやすいのが勝因か(受賞していないので「勝因」もなにもあったもんじゃないが)。

「つぎの著者につづく」は、正直なにが面白いのか分からんかった。まぁ、オレの場合、元ネタ(?)であるラファティの「つぎの岩につづく」もどこが面白いのか分からんかったしなー。

しかし、この薄さで1200円(税込)はちょっと高いよな。文庫にすれば、500円くらいなんじゃね?

_ Firefox 3 Beta5でvimperator 0.6preを使ってみた

otsuneさんのFirefox 3.0b5とvimperator0.6とAutoPagerizeとLDRizeとMinibufferとldr_cooperation.jsを組み合わせると快適過ぎる - otsune's SnakeOil - subtechを参考にして設定。

_vimperatorrcも/dotfiles/vimperator/otsune-vimperatorrc - CodeRepos::Share - Tracからパクらせて頂いた。

あと、キーバインドの変更に窓使いの憂鬱を使っているので、vimperatorとかちあうキーバインディングを以下のように設定して外した(まだ未整理)。

# For Vimperator
window Firefox /firefox\.exe/ : EmacsEdit
 key C-F = &Default # page up
 key C-U = &Default # skip up
 key C-D = &Default # skip down
 key C-B = &Default # page down
 Key C-O = &Default # history back
 key C-Q = &Default # pass through
 key C-P = &Default # page up
 key C-N = &Default # page down

現状、以下のような問題があるけれど、おおむね快適に使えている。

  • クイックヒントのヒントテキストがなぜか数字。たぶん、どこかの設定で直るはずなので、あとで調べる。
    • 0.6preからは数字ヒントテキストになったらしい。アルファベット・ヒントテキストにしたい場合はchar-hints.jsを入れればいいらしいが、数字の方が便利そげ(2008/4/6追記)。
  • Gmailでは、autoIgnoreKey.jsを使ってvimperatorを無効にしているのだが、メールのリンクを開くと、vimperatorが有効になってしまう。仕方がないので、その度に、C-qでvimperatorを無効にしている。
  • It's All Textのホットキーのキーバインディングに悩み中。

2008/4/6追記

窓使いの憂鬱の設定をちょっと整理した。


2008-04-06(Sun) [長年日記] この日を編集

_ vimperatorを導入していらなくなった拡張

vimperatorを使いはじめたので、こないだ導入した拡張のうち

  • FireGestures
  • Tab Mix Plus

をアンイストールした。

_ vimperatorにpluginをいくつか追加

ナレッジエース - Vimperator 0.5.xで使えるプラグインの紹介を参考にしていくつかpluginを追加したのでメモ。

autoSwitchKey.js

昨日はautoIgnoreKey.jsを導入したけれど、実はもうobsoloteだったらしい。ってことで、autoSwitchKey.jsに切り替え。

毎日使うRemember The Milkのリスト追加と、昨日書いた

Gmailでは、autoIgnoreKey.jsを使ってvimperatorを無効にしているのだが、メールのリンクを開くと、vimperatorが有効になってしまう。仕方がないので、その度に、C-qでvimperatorを無効にしている。

という不具合対応について本家のコメント欄に書いてあったパッチをあわせて、以下のように変更。

--- lang/javascript/vimperator-plugins/autoIgnoreKey.js.orig
+++ lang/javascript/vimperator-plugins/autoIgnoreKey.js
@@ -16,10 +16,12 @@
  */
 var ignorePageList = [
     /^https?:\/\/mail\.google\.com\//,
-    'http://reader.livedoor.com/reader/'
+    'http://reader.livedoor.com/reader/',
+    'http://www.rememberthemilk.com/'
 ];

 document.getElementById('appcontent').addEventListener('DOMContentLoaded',function(event){
+    if ( event.target.documentURI != gBrowser.currentURI.spec ) return;
     if ( isMatch(event.target.documentURI) ){
         liberator.modes.passAllKeys = true;
     } else {

copy.js

  • HikiとtDiaryのWiki記法のリンク
  • Tracのリンク
  • tDiaryのamazon plugin

の設定を下記のように追加。

--- lang/javascript/vimperator-plugins/copy.js.orig
+++ lang/javascript/vimperator-plugins/copy.js
@@ -37,7 +37,10 @@
        { label: 'title',          value: '%TITLE%' },
        { label: 'anchor',         value: '<a href="%URL%">%TITLE%</a>' },
        { label: 'selanchor',      value: '<a href="%URL%" title="%TITLE%">%SEL%</a>' },
-       { label: 'htmlblockquote', value: '<blockquote cite="%URL%" title="%TITLE%">%HTMLSEL%</blockquote>' }
+       { label: 'htmlblockquote', value: '<blockquote cite="%URL%" title="%TITLE%">%HTMLSEL%</blockquote>' },
+       { label: 'hiki',           value: '[[%TITLE%|%URL%]]' },
+       { label: 'trac',           value: '[%URL% %TITLE%]' },
+       { label: 'amazon',         value: '{{isbn \'%SEL%\'}}' }
 ];
 // used when argument is none
 const defaultValue = templates[0].label;

_ メモ

  • 今日は絶好の洗車日和ということで、車を洗った。さすがに車を2台洗うと疲れるわ。
  • 洗っている途中、妻に「ますます剃り込みが深くなったね」と言われた。なんで労働している時に、やる気を削ぐようなことを言いますかwww
  • ウィルコムのやる気が見られないので、イーモバでも契約してしまおうかと思う、今日この頃。

2008-04-07(Mon) [長年日記] この日を編集

_ 100円ノートではじめる情報管理術──情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」 (Nanaブックス)(奥野 宣之)

ナナ・コーポレート・コミュニケーション様より本が好き!経由で献本御礼。

文房具店やコンビニで売っている、ごく普通のA6版ノート(100円ノート)を中心に行なうローテクな情報管理術を紹介しているのが本書。

いわゆるライフハック系の本だが、ノートの取り方から筆を起こし、ノートを便利にするためのちょっとした工作や、書いたノートからアイデアを掘り起こす方法まで含んでいて、「非常に使える」一冊になっている。

本書で紹介されている100円ノート式情報管理を簡単にまとめるならば、それは「すべての情報を1冊のノートに保存する」ということだ。 公私やジャンルなどの分類はせず、ちょっとしたメモも、ToDoリストも、スケジュールも、打ち合わせの内容も、日記もすべて1冊のノートに時系列に沿って(つまりは最初のページから)書いていく。 さらに書くだけではなく、給与明細や写真、手紙・ハガキといったものもどんどん貼っていく。 ページがなくなれば、表紙にそのノートに含まれる情報の期間(「○月○日〜○月○日まで」)を書いて保管し、次の新しいノートに移る。 1冊のノートに掛かる費用は100円だけなので、どんなページの使い方をしてももったいなくないということなのだ。 敷居が低い上、コストもかからず、ビジネスパーソンから学生まで職業問わず使える情報管理術だと言えるだろう。

著者はこの方式で得られる最大のメリットをこのように述べている。

本方式で、「何も覚えておかなくていい」「情報管理に煩わせられない」というストレスのない日常生活を送ると、頭=メモリはその能力を最大限に発揮します。(p.29)

この発想は、私が実践しているタスク管理術、GTDと同じものなので、なるほどと膝を打った次第。 GTDでは自分がやること・やりたいことをどんどんリストアップしていくことで頭の中のもやもやをなくしていくが、100円ノート式ではなんでもかんでもノートに書くことで、それを実現しているのだ (GTDについてはITmedia Biz.ID:Getting Things Done(GTD)まとめあたりを参照のこと)。

GTDをはじめとして*1巷には様々な情報管理術が溢れているが、既に他の情報管理術を使いこなしている人にも、本書から得られるエッセンスは有用なはずだ。

たとえば、本書で紹介されている中でも感銘を受けたものが、風呂のなかでメモする方法。 個人的によくあるシチュエーションが、シャンプーをしている時なり風呂に入っている時なりに「あ、あれをメモっておかなきゃ」と思いつくが、風呂から出たらもう忘れているというものだ。 著者は耐水ノートと濡れた紙にも書ける油性ボールペンの2つ(わずか数百円!)を使う解決策を紹介していて、これには「なるほど」と感心させられた。 さっそく実践したいと思う。

後々の検索のために、ノートを書いた後にPCやスマートフォンで索引を作るという方法には、正直なところ、面倒くさそうだなぁとは感じるものの(とはいえ、1冊で15分程度らしいが)、 この方式以上にシンプルかつ低コストでありながら効果的な情報管理術はそうはないのではないのかと思う。 情報管理の方法に迷っている読者には一読を強くオススメしたい。

なお、下世話な話題で申し分けないが、本書によれば、アダルトビデオのパッケージ写真は、プロのカメラマンがマシンガンのように撮影した数百枚のうちから「奇跡的によく撮れた1枚」を使用しているとのこと。 へーと思ったので付記しておく(締めがこれかよ!)。


情報は1冊のノートにまとめなさい

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書評/ビジネス

*1 正確にはGTDはタスク管理術なので情報管理術ではないのだが。


2008-04-08(Tue) [長年日記] この日を編集

_ 自らの死生観を問い直す一冊──自死という生き方―覚悟して逝った哲学者(須原 一秀/浅羽 通明)

双葉社様より本が好き!経由で献本御礼。

2006年4月に自死を遂げた哲学者須原一秀氏の遺著『新葉隠』に、浅羽通明による解説を加えたものが本書。

自死の原因としては、一般的に言われるものが、堪えられないほどの肉体的苦痛や精神的苦悶、悲観主義や厭世主義、薬などによる一時的な錯乱などであるが、著者の自死の理由はこのどれでもない。 人生の極みに達し人生を生き切ったと感じ、その後の老醜や苦痛に満ちた自然死を拒否するための自死だったのだ。

著者は『新葉隠』を書いた理由をこのように述べている

「もともと明るく陽気な人間が、非常にサバサバした気持ちで、平常心のまま、暗さの影も異常性も無く、つまり人生を肯定したまま、しかも非常にわかりやすい理由によって、決行される自死行為がある」ということを今から立証しようとしているとしているのである。(p.53)

自死したソクラテスや三島由紀夫、伊丹十三の事例を敷衍する一方で、数千人もの人々の最後を看取り聖母と呼ばれたキューブラー・ロスが脳梗塞で倒れた後は、敬虔なキリスト教であったがゆえに自死することができず苦痛に満ちた人生を送り、最後には神に呪いの言葉を吐くようになったことにも触れ、著者は自死が人間にとって「死の穏やかな受容」であり非難されるいわれのないものであることを論じている。

著者の考えはある程度理解はできるものの、それでも同意することはできないというのが本書を読んでの正直な感想だ。 はっきり言ってしまえば、まず「自死」という結論ありきで、後付けで理論を組み立てたようにも感じられる。

著者は人生において何度も「極み」を経験し満足を覚えたことを自死の理由のひとつとして挙げている。その「極み」を覚えた瞬間のひとつを、著者はこう書いている。

幼児だった子供二人と女房の四人で自宅の風呂に入っていて、息子が娘にふざけてお湯をはねかけていて、それを避けるため娘が私の首にかじり付き、女房が向こうで頭を洗っている(p.83)

想像するだけで家族の幸せを感じることができるシーンだ。たしかに「人生の極み」といっていい瞬間だと思う。

しかし、その瞬間は著者だけによって成されたのだろうか。 そうではないだろう。 家族があってこそ成立した瞬間であるはずなのだ。 その瞬間を経験させてくれた家族のために、たとえ苦痛に満ちた人生でも生きるという選択肢は著者になかったのか考えてしまう。 もし、介護などで家族の負担になっていると思えば、それはその時に考えればいいことではなかったのか。

家族の問題まで踏み込む権利は当然、私にはないので無礼に当たることは承知で書くが、あとに残された者が「人生の極み」を覚える機会が著者の自死によって少なくなる可能性、場合によっては皆無になる可能性についてはまったく考慮はしなかったのだろうか。 これについても著者に問いたい気がする。 少なくとも著者の主張のような理由で自死を遂げようとする身内がいるとすれば、そのあまりに利己的な態度を非難せざるをえない。

さらに書くならば、著者が世界に誇るべきと書いている武士道を示した『葉隠』についての記述についても違和感を覚えた。 『葉隠』については未読なのでとやかく書くことはできないが、太平洋戦争に出征し特攻していった士官や兵士が『葉隠』に沿って「毅然として自らの死を受け入れて死んで行った」(p.206)と書くのは、あまりにもシンプルかつ楽観的すぎる見方であることは指摘しておきたい。 航空特攻は実質的には強制であったケースが非常に多かったし、有名な大和特攻でさえ命令によって行なわれたものだったのだ。

本書を読んで自分の死生観について考えてところ、ある小説のことが思い浮かんだ。

その小説とは夢枕貘の登山小説『神々の山嶺』だ。 そこに登場する登山家の手記が自分の死生観として目指すべきもののように感じたのだ。 少し長すぎるが、非常に印象的な部分なので引用する。

いいか。

やすむな。

やすむなんておれはゆるさないぞ。

ゆるさない。

やすむときは死ぬときだ。

生きているあいだはやすまない。

やすまない。 おれが、おれにやくそくできるただひとつのこと。 やすまない。

あしが動かなければ手であるけ。

てがうごかなければゆびでゆけ。

ゆびがうごかなければ歯で雪をゆきをかみながらあるけ。

はもだめになったら、目であるけ。

目でゆけ。

目でゆくんだ。

めでにらみながらめであるけ。

めでもだめだったらそれでもなんでもかんでもどうしようもなくなったらほんとうにほんとうのほんとうにどうしようもなくなったらほんとうにほんとうにほんとうにほんとうのほんとうにどうしようもなくほんとうにだめだったらほんとうにだめだったらほんとうに、もう、こんかぎりあるこうとしてもうだめだったらほんとうにだめだったらだめだったらほんとうにもううごけなくなってうごけなくなくなったら──

思え。

ありったけのこころでおもえ。(文庫版下巻、p.461-462)

たとえ往生際が悪いと言われようとも、こんな風に人生の最後の最後まで挑戦しつづけ、這いながらでも前に進み、力尽きて死をむかえるこそが、自分にとっての理想であるように思う。


自死という生き方

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書評/宗教・哲学


神々の山嶺〈上〉 (集英社文庫) 神々の山嶺〈上〉 (集英社文庫)
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神々の山嶺〈下〉 (集英社文庫) 神々の山嶺〈下〉 (集英社文庫)
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本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ heikiheik [昨日『自死』という言葉とこの本のことをはじめて知って、調べてたらこの場所に辿り着きました。私にはどっちが正しいことな..]

_ poppen [heikiheikさん 力の籠もったコメントありがとうございます。本書についてはあまり肯定的な読み方はできなかった..]


2008-04-09(Wed) [長年日記] この日を編集

_ 化石の発掘も苦難の連続──フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ (DOJIN選書 14)(長谷川 善和)

化学同人様より本が好き!経由で献本御礼。

恐竜図鑑を読んだことがあれば、フタバスズキリュウの名前が記憶にある人も多いのではないだろうか。 1968年に福島県いわき市の高校生、鈴木直少年によって見付けられたこのクビナガリュウの化石は、その後日本中に化石ブームを巻き起こし、『ドラえもん のび太の恐竜』が生まれる切っ掛けとなった。 国立科学博物館に展示されている復元骨格を目にした人もいるだろう。

しかし、フタバスズキリュウがエラスモサウルス類の新属新種であることが論文に発表され、学名フタバサウルス・スズキイがつけられたのが、つい最近の2006年だったということを知る人は少ないのではないかと思う。 なんと発見から実に40年の時が流れていたのだ。

鈴木少年から化石発見の第一報を受け取り、それが恐竜に化石であることを確認した著者が、フタバスズキリュウの発掘から復元、種の同定までの軌跡を描いたノンフィクションが本書。 第一線でフタバスズキリュウに関わった著者ならではの臨場感溢れる内容で興味深く読める本だ。

本書を読んで驚かされるのが、いかに発掘が大変な作業の連続であるかということだ。 もちろん、脆く崩れやすい化石をできる限り原型のまま掘り出すという技術的な問題もそうではあるのだが、その前段階のいわゆる「政治」レベルにおいても様々な手腕が必要とされるのだ。

フタバスズキリュウの発掘に関して言うならば、なによりもまず費用をどこから得るかの問題があった。 なんと、本格的な発掘に入る前の第一次発掘については、著者たちが勤める国立科学博物館からは費用が出ず、地元の石屋さんを雇っての発掘費用や旅費等は自腹を切っていたとのこと。 第二次発掘についても、博物館の予算では足りず、国の補助金も得ることができず、朝日新聞の後援によりなんとか実現できたというのが実情らしい。

資金の目処がついた後も、発掘現場は生活道路が走る崖の下ということで地元の土木事務所との折衝を行なって工事の規模を決定し、 日本初の本格的な化石発掘で注目を浴びるがゆえのマスコミ対策を行ない、 化石を持ち帰ったことが原因によって祟りが起きては困るという地元の人を安心させるための御祓いを催し、 さらには盗難しようとする不届きな輩から化石を守りと、発掘以前の作業が山積みなのである。

無事発掘を終えたら終えたで(著者は明言していないが、後援者への義理を果たすためだろう)突貫工事で化石のクリーニング作業を行なって展示場となる百貨店巡りをするあたり「研究者も大変だなぁ」と思わずにはいられない。

冒頭に述べたフタバスズキリュウの同定が遅れた原因であるが、エラスモサウルス類の研究例が少なかったことに加えて、日本の研究機関の宿痾とでも言うべき、人材および資金不足のためのようである。

発掘記とともに本書では、そうであったに違いないと考えられているクビナガリュウの様々な生態について述べられている。 詳しい内容は本書に譲るが、その中でも個人的に一番興味深かったのが、クビナガリュウの化石の周りで見付かることが多いという石の話。 フタバスズキリュウの周辺でも見付かったそれはクビナガリュウたちが深く潜るため、飲み込んだり吐き出したりしてバラスト代わりに使っていた可能性があるという。 なんとも面白い。

私のようなUMA(未確認動物)のためのボーナストラックなのか、ネッシーやニュージーランド沖合いで日本のトロール船が引き上げた謎の腐乱死体(それとシーラカンス)に一章を当てているのも嬉しいところだ。 ただ、著者の見解はこれらのUMAの存在については、ほぼ完全否定というものなので、あまり盛り上がらないが。 まぁ、ネッシーや謎の腐乱死体については、昔から懐疑的な意見が多いので、さもありなんという感じではある。

全193ページとそれほどページ数が多くないため、多少あっさり気味な印象を受ける本書だが、逆にいえば恐竜マニアならずとも面白く読める、程良い「濃さ」の一冊だ。


フタバスズキリュウ発掘物語

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書評/歴史・時代(F)


2008-04-10(Thu) [長年日記] この日を編集

_ copy.jsのtemplateをvimperatorrcで設定できるpatchを書いた

autoIgnoreKey.jsがvimperatorrcにURLリストを書けるようになっていたので、それを参考にしてcopy.jsでもvimperatorrcでtemplateを指定できるようにしてみた。

説明書きはautoIgnoreKey.jsからもろパクリ。:-)

--- copy.js.orig	2008-04-03 03:56:46.000000000 +0900
+++ copy.js	2008-04-10 21:24:11.000002000 +0900
@@ -31,8 +31,25 @@
  *        %URL%     -> to the URL of the current page
  *        %SEL%     -> to the string of selection
  *        %HTMLSEL% -> to the html string of selection
+ *
+ * The copy_templates is a string variable which can set on
+ * vimperatorrc as following.
+ *
+ * let copy_templates = "[ {label:'titleAndURL', value:'%TITLE%\n%URL%'}, {label:'title', value:'%TITLE%'} ]"
+ *
+ * or your can set it using inline JavaScript.
+ *
+ * javascript <<EOM
+ * liberator.globalVariables.copy_templates = uneval([
+ *   { label: 'titleAndURL',    value: '%TITLE%\n%URL%' },
+ *   { label: 'title',          value: '%TITLE%' },
+ *   { label: 'anchor',         value: '<a href="%URL%">%TITLE%</a>' },
+ *   { label: 'selanchor',      value: '<a href="%URL%" title="%TITLE%">%SEL%</a>' },
+ *   { label: 'htmlblockquote', value: '<blockquote cite="%URL%" title="%TITLE%">%HTMLSEL%</blockquote>' },
+ * ]);
+ * EOM
  */
-const templates = [
+const templates = window.eval(liberator.globalVariables.copy_templates) || [
 	{ label: 'titleAndURL',    value: '%TITLE%\n%URL%' },
 	{ label: 'title',          value: '%TITLE%' },
 	{ label: 'anchor',         value: '<a href="%URL%">%TITLE%</a>' },
本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ teramako [パッチありがとうございます。勝手ながら適用させていただきました。 http://coderepos.org/shar..]

_ poppen [パッチの取り込みありがとうございます。 copy_templatesという変数名はどうかなぁということで、coder..]


2008-04-12(Sat) [長年日記] この日を編集

_ vimperatorでのコマンドラインへの貼り付け方法が分からなかった

vimperatorを使いはじめて1週間。おおむね快調に使えているんだけども、問題がひとつ。

それがコマンドモードでのコマンドラインへの貼り付け。

vimではコマンドラインへの貼り付けには<C-R>"でやっていたのだが、vimperatorでは<C-R>はFirefoxの再読み込みになっていて、それが効かない。 vimperatorrcで切り替えられればいいのだが、ググってもそれっぽい設定が出てこない。

「いったい、他の人はどうやって貼り付けしているんだろう?」と思いつつ、いちいちマウスで貼り付けする毎日を送っていたのだが、今日ふと「ソース読めばいいんじゃね?」と思いついたので、vimperatorのソースをcvsでcheckoutしてきて

% grep -r -i paste *

してみた──。src/content/edit.jsにこんなんの書いてあるやん!

liberator.mappings.add(modes,
       ["<S-Insert>"], "Insert clipboard/selection",
       function () { liberator.editor.pasteClipboard(); });

ってことで、<S-Insert>でバッチリ、コマンドラインに貼り付けることができた。

ついでにvimでも試してみたら、こっちも動く!!

もしかして、<S-Insert>が標準的な方法だったんだろうか。 もう2年くらいvimを継続して使っているけど、全然知らんかったよ。

そんな訳で、vimのスキルも自然と上がる、vimperatorはオススメって話でした(ぉ

_ S-Fマガジン 2008年 04月号 [雑誌] S-Fマガジン 2008年 04月号 [雑誌]

1ヶ月遅れで読了。

「『SFが読みたい!2008年度版』が選ぶ・『ベストSF2007』上位作家競作」特集ということで、高水準の作品が多く、非常に楽しめる号だった。

以下、感想をつらつらと。

「From the Nothing,With Love.」(伊藤計劃)

007シリーズへの愛に溢れた作品。これは傑作だ。

うむむ、「彼」の姿形がすっかり代わることに、こんな理由があったとは。 本国でも受ける内容じゃなかろうか。

「The History of the Decline and Fall of the Garactic Empire」(円城塔)

円城塔はどちらかといえば、苦手なんだけど、これは文句なしに面白かった。

50:「銀河帝国は発射されますか」

「その手はケリー・リンクが使用済みです」

66:総員銀河帝国せよ。私は銀河帝国と運命と共にする。何もかもがみな、懐しい。

には爆笑。

「戦争読書録」(クリストファー・プリースト)

『双生児』の参考文献。

ジョン・キーガンとマーティン・ミドルブックの本は、ほとんど訳されていないみたいだが読んでみたい。

「出血がとまるまで押さえてください」(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)

ティプトリーだけど、風刺色が強すぎて個人的にはいまいち。

「『オリュンポス』は続篇の夢を見るか』(酒井昭伸)

ダン・シモンズ『イリアム』と『オリュンポス』に関する裏話と、第三部について。

文庫落ちを待っていて、実はこのシリーズ未読だったりするんだけど、読みたくなってしまう。

「小便の王様をたずねる旅」(椎名誠)

シベリアに行った時の極寒話。

シモンズの『ザ・テラー』は傑作ホラーだと思ったけれど、ここらへんの細かい描写が入れば、もっと良くなったような気がする。

「南極点のピアピア動画(前篇)」(野尻抱介)

宇宙開発+自己増殖機械+ニコニコ動画な話。

えらく短い割に前後篇に分かれているというのはあれだけど、面白かった。 後篇に期待。

「流浪の民」(菅浩江)

今号から新連載のお化粧SF。

ストーリーがどう展開するのか分からんのでなんとも言えないが、期待できそうではある。

それにしても、女性は大変だねぇーというのが第一印象だったり。

_ 近所のホームセンターで前飼っていた犬に、そっくりな犬がいた

dog

顔も毛質もそっくり。こちらの方が耳が大きいのと足に水玉模様があるけど。

早く家にも犬来ないかなー(動物保護センターに里親申し込み済みだったり)。


2008-04-13(Sun) [長年日記] この日を編集

_ 軌道エレベータがある地続きの未来を描く──妙なる技の乙女たち(小川 一水) 妙なる技の乙女たち(小川 一水)

時は21世紀半ば。 画期的なカーボンナノチューブが実現し、赤道直下のシンガポール沖リンガ諸島に世界初の軌道エレベータが建造された。 メガフロート群によって拡張された島で働く女性たちを描いた連作集が本書。

本書に収められた作品は下記の7篇。

  1. 「天上のデザイナー」
  2. 「港のタクシー艇長」
  3. 「楽園の島、売ります」
  4. 「セハット・デイケア保育日誌」
  5. 「Lift me to the Moon」
  6. 「あなたに捧げる、この腕を」
  7. 「the Lifestyle Of Human-being At Space」

軌道エレベータという魅力的な建造物があれば、どうしてもそれに焦点を当ててしまうのがSF者のサガというものだが、著者はその誘惑に屈しなかった。

本書の収録作で、宇宙開発をストレートに扱った作品は最終話のみ。 他の作品では工業デザイナーや水上タクシー艇長、不動産屋、保育士、軌道エレベータの客室アテンダント、彫刻家といった「軌道エレベータの麓」で額に汗する女性たち*1を生き生きと描写して、現在から地続きの未来であることを感じさせる厚み持った作品世界の構築に成功している。

最終話も、人間が宇宙を故郷として暮らしていくための環境と技術を追う展開になっていて、さすがは『第六大陸』で地に足が着いた宇宙開発を描き出した小川一水と唸らせられる出来だ(ちなみにタイトルは「LOHAS」とかけている)。 それまでの各話に登場したキャラクターたちの子供が活躍する遊びも楽しい。

個人的なお気に入りは、保育士と保育園に紛れ込んできた謎の男児との交流を描いた「セハット・デイケア保育日誌」だ。 特別な技能を持たないごく普通の女性を主人公に据えたという点で、収録作の中でも異色であるが、登場人物たちの交流がなんとも温かく、快い読後感を残す作品に仕上がっている。

著者紹介の「日本SF界の旗手」という言葉が決して大袈裟ではないことを実感させてくれる一冊だ。

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) 第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房
¥ 714

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA) 第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房
¥ 714

*1 アテンダントの職場は「麓」とは言えないけど。

_ copy.jsのパッチを取り込んでもらったよ

こないだ書いたcopy.jsのpatch、JavaScriptがよく分からんのでちょっとビビってcommitを躊躇していたんだけど、作者のteramakoさんに取り込んでもらったので一安心。

ってことでvimperatorrcに下記の設定を追記。 書式をいじる時に、copy.jsを編集しなくてよくなったので、すげー楽になった。

" copy.js
javascript <<EOM
liberator.globalVariables.copy_templates = uneval([
	{ label: 'hiki',   value: '[[%TITLE%|%URL%]]' },
	{ label: 'trac',   value: '[%URL% %TITLE%]' },
	{ label: 'amazon', value: "{{isbn '%SEL%'}}" }
]);
EOM

せっかくcodereposのアカウントを持っているんだから、次回からビビらずにcommitしようと自戒(ダジャレじゃないよ)。


2008-04-14(Mon) [長年日記] この日を編集

_ 仕事で壁にぶつかっている人にとっては読む価値のある一冊──人生を変えた5つのメール(濱田 秀彦)

祥伝社様より本が好き!経由で献本御礼。

キャリアコンサルタントの著者による、ビジネスにおける教訓を伝えてくれる小説が本書。 1時間程度で読めてしまう内容だが、なかなか示唆に富んだ一冊だった。

事務用品を販売する中小企業に就職して3年目の若者が本書の主人公。 仕事に行き詰まりを感じながら毎日を送っている。 そんなある日、差出人不明の携帯メールを受信する。 「君はビジネスマンとして成長したいかい?」 そんな出だしではじまるそのメールは、主人公に問いを投げかけるものだった。 書かれていた問いへの答えを考えるうちに、主人公は知らず知らずビジネスパーソンとして成長をしていく、というのが本書の骨子。

小説仕立ての成長訓ということで、雰囲気的には先日読んだ『自分の小さな「箱」から脱出する方法』近い。 ただ、あちらが人生における問題を扱っているのに対して、本書ではビジネスに焦点を当てているのが特徴。 それだけにビジネスパーソンにとっては実践的といえる内容になっている。

謎のメールが問いかける質問は次の5つ。

  1. キャリア開発とは何をすることか?
  2. 人に仕事を頼むとき、大切なことは何か?
  3. 叱られたとき、最後に言う言葉は何か?
  4. 自分の意見を言うのに必要なことは何か?
  5. 出口が見つからないときは、どうすればよいか?

就職したての若者にとっては、ずばりな質問ではあるだろうし、ある程度経験を積んだ社会人でもぱっと答えられないものもあるのではないだろうか(ちなみに、私はなんちゃって社会人なので、ぱっと答えられないものばかりでした)。

私は根性が捻じ曲がっているので、教訓本のたぐいを読むとつい反発してしまいたくなってしまうのだが、本書については、やはり、それなりの居心地の悪さを感じながらも「ほぉ」と思わされる内容が多かった。 特に「小さな勇気をかきあつめる」、「目の前のことを実際にはじめる」なんてなかなか良いフレーズだと思う。

ケチな本読みとしては、本書の1260円(税込)という価格はページ数からすると「ちょっと高いなぁ」と感じるものの、仕事で壁にぶつかっている人にとっては読む価値のある一冊と言えるだろう。


人生を変えた5つのメール

Amazonで購入
書評/ビジネス

自分の小さな「箱」から脱出する方法 自分の小さな「箱」から脱出する方法
アービンジャー インスティチュート/金森 重樹/冨永 星
大和書房
¥ 1,680


2008-04-16(Wed) [長年日記] この日を編集

_ 〈真・ク・リトル・リトル神話大系〉シリーズ復刊第2弾──新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈2〉(H.P. ラヴクラフト) 新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈2〉(H.P. ラヴクラフト)

『新編真ク・リトル・リトル神話大系 1』につづく、〈真・ク・リトル・リトル神話大系〉シリーズ復刊第2弾

本書の収められているのは下記の全14篇。

  1. 「納骨堂綺談」(A・ダーレス&M・スコラー)
  2. 「魔道士の挽歌」(C・A・スミス)
  3. 「足のない男」(D・ワンドレイ)
  4. 「脳を喰う怪物」(F・B・ロング)
  5. 「羅星魔洞」(A・ダーレス&M・スコラー)
  6. 「奈落より吹く風」(A・ダーレス)
  7. 「屍衣の花嫁」(D・ワンドレイ)
  8. 「暗恨」(R・シーライト)
  9. 「彼方よりの挑戦」(A・メリット&H・P・ラヴクラフトほか)
  10. 「妖蛆の秘密」(R・ブロック)
  11. 「顔のない神」(R・ブロック)
  12. 「嘲嗤う屍喰鬼」(R・ブロック)
  13. 「闇に潜む顎」(R・E・ハワード)
  14. 「探綺書房」(H・ハッセ)

短い作品がほとんどなので、収められている数は多め。

「魔導師の挽歌」や「奈落より吹く風」、「妖蛆の秘密」あたりは昔、微かに読んだ記憶があるが、すっかり中身を忘れているので初読と変わらなかった。 物忘れが激しいというのにも良いところもあるもんですな。:-)

収録作の中でも、個人的なお気に入りは、魔導師エイボンとイホウンデーの大司祭モルギのユーモラスな土星地獄巡り「魔導師の挽歌」、 イサカ(イタカ)たんが活躍(?)する「奈落より吹く風」、 ロイガーたんとツァールたん、それにチョチョ族(トゥチョ=トゥチョ人)のみなさん登場の「羅星魔洞」、 C・L・ムーア、A・メリット、ラヴクラフト、ロングの合作という異色作「彼方よりの挑戦」あたり。

特に「羅星魔洞」は、ウルトラマンばりのド派手な展開がダーレスらしくて面白かった。 スン高原への旅のくだりも こないだ読んだ『大冒険時代──世界が驚異に満ちていたころ50の傑作探検記』ぽくてグー。

「彼方よりの挑戦」も「まぁ、ネタな作品なんで出来は大したことないだろうなぁ」なんてことを予想しながら読みはじめたら、意外に面白いのでびっくり (メリットのやる気の感じられない筆致は、ちょっとアレだけど)。

反対に、なんじゃこりゃというものが、ロングの「脳を喰う怪物」。 序章をぶった切ったがのように唐突にはじまるわ、ロクに登場人物の説明もないわで、読むのがかなり辛いデキ。

全体的になかなかの水準だし、訳もこなれているので、クトたん好きには良い一冊だと思われ。

ちなみに

本書の解説は、クトゥルフなエロゲー『デモンベイン』シリーズで(一部において)有名なシナリオライター、鋼屋ジンなのだが、

だけど太陽から一番近いプロキシマ・ケンタリウスだって、光の速さで四年の旅路。スペースシャトルなんかに乗っていたら、千回生まれ変わったってたどり着けない。(p.344)

と、微妙に分かってなささが漂う文章を書いていて、ちょっと噴いた。

スペースシャトルじゃ月だって行けないんだからその比喩はおかしいよ!


2008-04-17(Thu) [長年日記] この日を編集

_ 新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈3〉(A. ダーレス) 新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈3〉(A. ダーレス)

昨日の『新編真ク・リトル・リトル神話大系 2』に引き続き、第3弾も読みましたヨ。

本書の収録作は下記の8篇。

  1. 「セイレムの怪異」(H・カットナー)
  2. 「墓地に潜む恐怖」(H・ヒールド)
  3. 「暗黒の接吻」(R・ブロック&H・カットナー)
  4. 「セベックの秘密」(R・ブロック)
  5. 「メデューサの呪い」(Z・ビショップ)
  6. 「触手」(H・カットナー)
  7. 「ハイドラ」(H・カットナー)
  8. 「幽遠の彼方に」(A・ダーレス)

前巻と比較すると、長めの作品が多い割りには強烈な印象を残すパンチの効いた作品は少なかったが、ハイドラたん初登場の「ハイドラ」とイサカ(イタカ)たん再びが再び登場する「幽遠の彼方に」はなかなか面白かった。

ク・リトル・リトル(クトゥルフ)神話作品で日本人が初登場した「暗黒の接吻」も注目作。 件の山田博士は、活躍こそしないが、日本人に対する風当たりの強かった当時にしては珍しく悪役でない点も良い。 山田博士を主人公にした神話作品なんていうのも、金田一耕助シリーズのスピンオフみたいで面白そうだ。

本書を読んで強く感じたのが、訳でずいぶん印象が変わるなということ。 収録作のうち、「墓地に潜む恐怖」と「メデューサの呪い」は『ラヴクラフト全集 別巻(上)』『ラヴクラフト全集 別巻(下)』で既読だけど *1、 大瀧啓裕訳の〈ラヴクラフト全集〉は、かなり退屈で眠気を誘うものだった一方、本書ではそれなりに読める内容になっている。 個人的には、仰々しい言い回しで古典の雰囲気を醸し出す大瀧訳より、リーダビリティの高い本書の訳の方が好みだ。

つづく、第4巻は5月刊行ということなので楽しみに待ちたい。

*1 〈ラヴクラフト全集〉ではそれぞれ「墓地の恐怖」と「メドゥサの髪」というタイトルになっている。


2008-04-18(Fri) [長年日記] この日を編集

_ インテリジェンス人間論(佐藤 優) インテリジェンス人間論(佐藤 優)

佐藤優が古今東西の様々な人間について語っているのが本書。 著者お得意の政治家から情報関係者、キリストやユダ、果ては著者のニックネームの元ネタとなったラスプーチンまでと、幅広い分野の人々をカバーする内容となっている。

正直なところ、鈴木宗男や橋本龍太郎、小渕恵三、森喜郎など著者が仕えた政治家たちのエピソードは、著者の他の著作にさんざん書かれていることなので多少食傷気味なきらいはあるのだが、他の人たちの逸話はなかなか面白く、楽しんで読める一冊だった。 ちなみに、変わったところでは星飛雄馬も取り上げられています。

鈴木宗男バッシングの際に、著者を擁護した安倍晋三(当時、内閣官房副長官)が「ちょっとだけ好き」で、「鈴木はガンガンやったほうがいい」と発言していた福田康夫(当時、内閣官房長官)を嫌っているという著者の本音が透けて見えるところも、ちょっとおかしい。

以下、ロシア関係のネタが興味深かったのでメモ。

  • ロシア大統領プーチンは人間を愛さず、その愛はメスのラブラドール犬、コニーに向けられているとのこと(今日流れた、プーチンの再婚報道とあわせて考えると面白い)。
  • ロシア憲法は大統領の連続三選を禁止しているので、一期別の人間(先日当選したメドベージェフ)に大統領をやらさせた後、また大統領選に出馬すると、著者は予想している(個人的にはありそうだという気がする)。

2008-04-19(Sat) [長年日記] この日を編集

_ 思わず涙ぐんでしまった写真

http://riotrepublic.tumblr.com/post/32183339

愛犬はちの最後の日々を思い出してしまった。


2008-04-22(Tue) [長年日記] この日を編集

_ ドイルの隠れた佳作を愉しめる一冊──陸の海賊―ドイル傑作集〈4〉 (創元推理文庫)(コナン ドイル/北原 尚彦/西崎 憲/Arthur Conan Doyle)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

コナン・ドイルといえば、〈シャーロック・ホームズ〉シリーズや、『失われた世界』をはじめとする〈チャレンジャー教授〉シリーズがとみに有名だが、ドイルが書いた中でもあまり人口に膾炙してこなかった作品群を集めたのが〈ドイル傑作選〉シリーズだ。

その第4弾である本書は〈スポーツ・冒険編〉と銘打たれ、ボクシングや狐狩り、クリケットといったスポーツ物の他、海賊や騎士を題材にした冒険物など、全14篇を収録している。 どれも粒揃いで隠れた佳作を愉しめる一冊といっていいだろう。

収録作の中でも、特に印象に残ったのが、学費の支払いに困窮する医学生がひょんなことからプロボクサーとの試合に臨むことになる「クロックスリーの王者」 。お約束な展開であるにもかかわらず、ぐいぐい引っ張られる筆力はさすがはドイルだとうならせられる。

ボクシングものとしては、その他、「バリモア公の失脚」「ブローカスの暴れん坊」「ファルコンブリッジ公」の3篇が収められているが、どれも一捻りしてあり楽しめる作品になっている。

ちなみに編者あとがきによれば、これらの作品で言及されるクイーンズベリー・ルールとは、グローブの着用を義務付けたルールで、それ以前は拳(ベア・ナックル)でボクシングが行なわれており選手が死亡することも稀ではなかったとの由。 ボクシングというよりは、まるで『ファイト・クラブ』のような試合が行なわれていた訳ですな。

「スペディグの魔球」は、日本の野球マンガでも時折見掛けた魔球物。 ただし、野球ではなく、クリケットというのがいかにも英国らしい。 クリケットについて全く知識がないので、細かい部分がまったく分からず、変な意味で笑ってしまった一篇だ。 クリケットについては、編者あとがきで解説されているので、そちらを読んでから本篇を読んだ方が理解できるかもしれない(正直に告白すると、私は解説を読んでもよく分かりませんでした。はい)。

「セント・キット島総督、本国へ帰還す」「シャーキー対スティーヴン・クラドック」「コプリー・バンクス、シャーキー船長を葬る」の3篇は、カリブの海賊シャーキー船長を主人公とした作品。 カイブの海賊だからといって映画の『パイレーツ・オブ・カリビアン』のようなぬるいストーリーを想像していると、シャーキー船長の残虐非道ぶりにびっくりするかもしれないのでご注意を。

刊行予定によれば、本書につづく第5弾にはSF作品が多数収められる予定のようで、SF者としては嬉しいかぎり。 楽しみに待ちたい。


陸の海賊

Amazonで購入
書評/歴史・時代(F)


2008-04-23(Wed) [長年日記] この日を編集

_ 宦官探偵、登場──イスタンブールの群狼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(ジェイソン・グッドウィン/和爾桃子) イスタンブールの群狼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(ジェイソン・グッドウィン/和爾桃子)

19世紀のオスマン帝国時代の首都イスタンブールを舞台に、宦官ヤシムが近衛新軍士官連続殺人事件を追うという一風変わった探偵小説が本書。

イスタンブールの活気溢れる町中の様子が生き生きと描かれ、月並だが「まるで見て来たみたいだなぁ」なんてことを思っていたら、それもそのはず。 著者はミステリ分野でこそ新人だが、オスマントルコ史については何冊もの著作を上梓しているベテラン歴史著述家とのこと。 根からのイスタンブール大好きっこが書いたんだから当たり前といったら当たり前ですなー。

純粋にミステリーとして見ると、人物視点がころころと変わったり、伏線が回収し切れていなかったりと粗も見えたりするのだけども、 イスタンブールと、料理好きなヤシムやその友人のポーランド大使パレフスキー、コサック舞踏手プリーンといった魅力的な登場人物たちは、そんな欠点も補って余りありますよ。

個人的には、作中で描写される風呂屋+マッサージが非常に気持ち良さそうで、一回体験してみたくなったり。

なお、訳者あとがきでは、登場するトルコ料理のひとつ、トライプ・スープのレシピも紹介されているので、そこらへんもちょっとお得。

イスタンブールLoveな人はもちろん、「美貌*1の宦官」という主人公にビビッとくる腐女子属性の人は読んで損なしの一冊。 あー、ちなみに、ヤシムはBLな人ではないので、そっち方面を期待して読まないように。

原著では宦官ヤシムを主人公とする第2作(既刊)、第3作(執筆中)とつづいているらしいので、邦訳されることを希望したい。

*1 かどうか分からないけど、なんとなく、そんな感じ


2008-04-24(Thu) [長年日記] この日を編集

_ 一度味わえば中毒になるかも──ナイフ投げ師(スティーブン ミルハウザー/Steven Milhauser/柴田 元幸) ナイフ投げ師(スティーブン ミルハウザー/Steven Milhauser/柴田 元幸)

スティーヴン・ミルハウザーの第三短篇集が本書。

実はミルハウザーの作品を読むのは今回が初めてだったのだが、多少の違いはあれ、不安感を掻き立てられる作品ばかりでなんとも奇妙な読後感。

訳者である柴田元幸氏が

ミルハウザーを好きになることは、吸血鬼に噛まれることに似ていて、いったんその魔法に感染してしまったら、健康を取り戻すことは不可能に近い(p.277)

とその中毒性を評しているけど、たしかにこの不安感は中毒になりそうだ。 「どうして不安に思ったんだ?」と疑問に思い、また再読してしまうというか。

かさぶたを剥がして傷口を見てしまう心理に近いかも知れない。

本書に収録されている作品は下記の12篇。

  1. 「ナイフ投げ師」
  2. 「ある訪問」
  3. 「夜の姉妹団」
  4. 「出口」
  5. 「空飛ぶ絨毯」
  6. 「新自動人形劇場」
  7. 「月の光」
  8. 「協会の夢」
  9. 「気球飛行、一八七〇年」
  10. 「パラダイス・パーク」
  11. 「カスパー・ハウザーは語る」
  12. 「私たちの町の地下室の下」

ある町を訪れたナイフ投げ師の徐々に危険度を増していく興行と、恥じつつもそれに魅せられていく観客たちを絶妙な筆致で描いた表題作は傑作だが、 夜な夜な森に集う少女たちへの不安に満ちた大人たちの眼差し「夜の姉妹団」や夜中に目覚め町へ彷徨い出した少年と少女たちの交流「月の光」、天才自動人形職人の先鋭化のあまり突き抜けてしまった技巧を描く「新自動人形劇場」も素晴しいデキ。

「協会の夢」の主役である、謎の協会に買収され、日々、拡大と変化しつづける一大エンターテイメントの場と化した百貨店と、地下へと広がり徐々に淫靡さを増していく「パラダイス・パーク」登場のパラダイス・パークは、ひとつのテーマの裏表を描いた、いわば姉妹篇とでもいうべきもので、かなり気に入った作品。 ちなみに、どちらにも詳細なミニチュアが登場するのだが、著者が気に入っているモチーフのような気がする(ホントかどうかは知らんけど)。

楽しく読める本かといえば、首を捻ってしまうが、一度味わってみる価値のある一冊ではないかと思う。気に入るかどうかは読み手次第だけども。


2008-04-25(Fri) [長年日記] この日を編集

_ 大人しい一般人の仮面の裏に隠された暴力性を暴き出す戯曲──21世紀を憂える戯曲集(野田 秀樹) 21世紀を憂える戯曲集(野田 秀樹)

野田秀樹が手掛け、最近上演された戯曲を収めたものが本書。

本書には三本の戯曲が収録されているが、 太平洋戦争とイラク戦争をオーバーラップさせアメリカの正義を問い掛ける「オイル」については「石油を欲して戦争を引き起こすアメリカ」という図式がどうにも単純すぎるように感じられたし、 プロレスとミライ村虐殺事件を重ねた「ロープ」についても、その意義が掴めず(戦争の劇場化などの問題提起がされていると思うのだが)今一つピンとこなかったというのが正直な感想だ。

ただ、残る「THE BEE」については、掛け値なしにスゴイ作品だと思った。 自宅に立て籠った脱獄犯に妻と子を人質に取られた会社員が、報復として犯人の妻子を人質にして立て籠るというのが骨子なのだが、ごくごく平凡な人間だったはずの会社員が脱獄犯よりも暴力性を加速させ、冷徹に人質の子供の指を切断し、その妻をレイプするという凄まじい展開になる。

大人しい一般人の仮面の裏に隠された暴力性を暴き出し、我々が持つ倫理観を揺さぶってくる問題作といえるだろう。


2008-04-26(Sat) [長年日記] この日を編集

_ アドエスの機種変が実質0円になったので機種変した件

W-ZERO3[es]ももう2年だし、そろそろイーモバに乗り換えるかなぁ。 でも、EMONSTERは音声端末としては使いにくそうだしなぁ、とか考えていたら、今日からアドエスへの機種変が W-VALUE SELECTで実質0円 になり、さらに 台数限定のスターターキットも貰えるということで、ちょっと2年縛りというのが気になるものの、機種変してしまった。

ちなみに、料金プランはずっとつなぎ放題コースなんだけども、WILLCOM STOREから機種変を申し込むと、「現在お使いの料金プランは継続できません」云々という表示がされて、ちょっとビビったが、そのまま「つなぎ放題コース」を選べば継続されるとのこと(サポートに電話して確認した)。

端末は、明日には届くみたいなので、ちょっと楽しみ。 まぁ、初代京ぽんを入手した時みたいな感動はないだろうけど。

それにしても、上位機種がわずか半年で0円になるとはライフサイクルのあまりの早さに驚くね。


2008-04-27(Sun) [長年日記] この日を編集

_ 文学作品が苦手な人間にも読もうと決心させてくれる好特集──考える人 2008年 05月号 [雑誌]

新潮様より本が好き!経由で献本御礼。

普段、雑誌はあまり読まないせいもあって、本誌の存在も今回はじめて知った。 本誌のサブタイトル、plain living & high thinkingがなにを表わしているのか、今一つぴんとこなかったりするのだが、文学好きのためのLOHAS的な雑誌と考えれば、そう的外れではないのではないかと思う。 1400円(税込)という価格は、雑誌としては高めの部類に入ると思うが、掲載記事の執筆陣も豪華だし、カラーページも豊富なので妥当な金額と考えていいだろう。

さて、今号の特集は「海外の長篇小説ベスト100」。 作家、批評家、翻訳家、文学研究者、新聞記者、エッセイスト、脳科学者、哲学者、精神科医など、様々なジャンルの書き手、総勢129人が選んだ海外の長篇小説のランキングが掲載されている。 寄せられた回答やエッセイ、ロングインタビューや対談などを読むと、読書に対する各人のこだわりが見えてなかなか面白いのであるが、同時に恥ずかしさのあまり、こそこそと隅っこに隠れたくなるような内容にもなっている。 というのも、どうにも文学作品というヤツが苦手で今まで全然読んだことがないからなんですなー。

ちなみに、10位以内(Webに掲載されている目次で確認できます)で読んだことがある作品は皆無。 100位以内を見ても、わずか6作しか読んだことがないという惨憺たる有様だったりする。

青山南、加藤典洋、豊崎由美の三氏の対談で、豊崎氏が語っているところによれば、イギリスの学者たちの間では「恥辱ゲーム」というものがあるそうだ。 その内容が

世界的に有名で、文学者だったら絶対読んでいなきゃいけないのに、なんと読んでいないという本を告白する。それが名著であればあるほど勝つ。だけど自分は恥辱にまみれる。(p.95)

というものだそうで、この伝でいけば「オレなんて優勝候補だな」と思ったりして。

ただ、出版業界の昨今の苦境を考えると、そう開き直っているへらへらしている場合ではないのかもしれない。 豊崎氏は翻訳小説の将来に次のように語っている。

私は翻訳文化の存続にはすごく危機感を覚えてて、いま買っておかないととか、自分で買っとかないと売れない、売れないと出してもらえないと、どうしよう、という恐怖感があって、つい目につく端から……。(p.101)

うむむ。マイナーな(つまり、あまり売れない)作家の作品が訳されない時代が来てしまうと非常に困ってしまう。

青山氏はその原因のひとつを次のように分析している。

「本の雑誌」の台頭も影響しているんじゃないかな。世に言われている名作なんかより、もっと身近におもしろいものがあるよと読者を自由にしてきた。それでかなり自由になったんだけれど、自由になり過ぎちゃったのかもしれない。(p.101)

「本の雑誌」ファンとしてはなんとも耳に痛い指摘だ。

翻訳文化の存続のためのささやかな活動として、今年中にはランキングに挙がっている本のいくつかは読みたい。

とりあえず、

  • 『百年の孤独』(ガルシア=マルケス) ← 堂々の1位だし、押さえておいた方が良さげ。
  • 『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー) ← 光文社から出た新訳を読みたい。
  • 『ロリータ』(ナボコフ) ← 映画は観たことがあるので入りやすそうだ。

こんな感じだろうか。

なお、本誌に掲載されている広告よれば、前々から読んでみたいなぁとなんとなく思っていたトマス・ピンチョンの作品の新訳版が2009年春から刊行予定とのことで、 期待大。 既に『ヴァインランド』は発売中とのことで、今度手に取ってみたいと思う。

そんな訳で苦手な文学作品を読もうと決心させてくれる好特集でありました。

特集以外の記事にもさっと触れておこう。

今号で最終回の「季節には味がある」では、白魚と筍の料理が紹介されている。 白魚はなかなか手に入れる機会はないが、筍は自宅の竹薮からにょきにょき顔を出しはじめているので、連休中に掘って刺身筍にしてみたいと思う。 なお、京都の筍はやわらかく、えぐみもないので朝掘り物は下茹が必要なく、関東のものは歯応えがあり香りがある一方、下茹が必要な由。 関東の方はくれぐれも下茹なしで刺身にしないように。

アフリカの大地に生きる動物たちの写真で心を和ませてくれるのは、写真家、岩谷光昭氏の「動物たちの惑星」。 ただ、麓の重要な水源になっているキリマンジェロの雪氷も、森林伐採をはじめとする要因により少なくなる傾向にあるという。 いずれは水場も消滅してしまう可能性があるとのことだ。

同じくアフリカの地、コンゴの奥地に幻の恐竜モケレ・ムベンベを探す旅行記が『コンゴ・ジャーニー』(レドモンド・オハンロン)。 今号にはその冒頭が掲載されている。 全財産をはたいてモケレ・ムベンベを探す旅に出た著者には思わずニヤニヤしてしまう。 UMA(未確認不思議動物)好きにはたまらない本だ。 既に『コンゴ・ジャーニー』は刊行されているようなので、こちらも近いうちに読みたいと思う。


考える人 2008年 05月号 [雑誌]

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コンゴ・ジャーニー〈上〉 コンゴ・ジャーニー〈上〉
レドモンド オハンロン/Redmond O’Hanlon/土屋 政雄
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コンゴ・ジャーニー〈下〉 コンゴ・ジャーニー〈下〉
レドモンド オハンロン/Redmond O’Hanlon/土屋 政雄
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2008-04-28(Mon) [長年日記] この日を編集

_ 読者は「勝ち組予備軍」だそうですよ、奥さん──社長の教科書(うらぼん)(中村 司)

インフォトップ出版様より本が好き!経由で献本御礼。

インターネットで物を売るためのノウハウを伝えるのが本書。 「自己啓発」や「成功本」の類いにはほとんど興味がないので、本書を読んでも感銘は受けなかったのだけども、色々な意味でスゴイ一冊ではありました。

なにがスゴイのか。

まず、「教科書」に「うらぼん」とルビを振ってしまうセンスがスゴイ。

「ネットビジネスに参入後、僅か10ヶ月目にして月額1000万円以上を安定して稼ぎ出すシステムを構築」や「6ヶ月で30億円の集客効果を出し、名実共に日本のTOPマーケッターとして名を連ねる」などという、どう評していいのか困ってしまう著者紹介もスゴイ。

そして、なんといっても煽りがスゴイ。

著者は、これからインターネットの世界での法人は「勝ち組」と「負け組」に完全に二極化すると語り、

本書を手にしたあなたは、すでにそのチャンスを手にしている「勝ち組予備軍」と言っても過言ではない。(p.22)

とぶち上げるしまうのだ。 「勝ち組予備軍」ですよ、奥さん。『ジョジョの奇妙な冒険』なら、ここでゴゴゴゴッと効果音が入るところだ、たぶん。

で、肝心の「勝ち組」になるためのノウハウだが、これが結構、堅実路線でちょっと拍子抜け。 少し例を挙げておくと、

  • インターネットモールに出店しても顧客は増えない。
  • 経営者にはSEO対策よりもやることがある。
  • Webページの制作や写真撮影はプロに任せるべき。
  • 広告を出すならGoogle AdsenseよりOvertureの方がいい。

ってな感じで、なるほどねと思えなくもないアドバイスなのだが、どこかで読んだような話でもあり「これで大儲けは厳しいんじゃないかなぁ」というのが正直な感想。 まぁ、詳しくは、著者のコンサルティングを受けてくださいってことなんでしょうかね(そうは書いてないけど)。

本書でちょっと理解できないのが、帯の宣伝文句。

成功法則なんか信じるな!

と書いてあって、「この本ってその成功法則を紹介してるんじゃないの?」と不思議に思ったのだが、もしかして、MMR風にいえば

キバヤシ 「こんなことを簡単に信じるようでは『勝ち組』になれないという作者の警告なんだ!」
ナワヤ・タナカ・イケダ「なんだってー」ΩΩΩ

ということなんでしょうか。

ちなみに、本書のあとがきで、著者がパソコンにもネットにもあまり詳しくなく、プログラミングもさっぱりと告白しているが、いくら経営者といえども自分が売る商品についてはある程度知っておいた方がいいんじゃなかろうかと余計なことを思ってみたり。


社長の教科書(うらぼん)

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書評/ビジネス


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