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2008-03-19(Wed) [長年日記]

_ アーサー・C・クラーク御大逝く

合掌。

享年90歳ということで、大往生といってもいいとは思う。

『楽園の泉』は、まだ蔵書を積めたダンボールに入っていると思うので、こんど掘り出して読み直そうか。

オレが生きている間に、軌道エレベータが実現すればいいなぁ。


楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)
アーサー・C. クラーク/Arthur C. Clarke/山高 昭
早川書房
¥ 903

Tags: SF

_ 第2の人生をハードボイルドに生きる── 木野塚探偵事務所だ (創元推理文庫)(樋口 有介)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

37年間奉職した警視庁を定年退職し、長年の夢だった探偵事務所を開設した木野塚佐平氏と秘書兼助手の梅谷桃世が活躍(?)する連作短篇集が本書。

本書に収録されているのは、下記の5篇。

  • 「名探偵誕生」
  • 「木野塚氏誘拐事件を解決する」
  • 「男はみんな恋をする」
  • 「菊花刺殺事件」
  • 「木野塚氏初恋の想い出に慟哭する」

警視庁に勤めていたとはいえ、実は木野塚氏は事務一筋の経理人間。 一度、警視総監賞を授与されたこともあるが、捜査とはなんの関係もない、経理事務へのコンピュータ導入を評価されてのものだったりする。

そんな彼が私立探偵になろうと決意した切っ掛けというのが、リュウ・アーチャーやフィリップ・マーロウ、マイク・ハマーらタフな私立探偵が活躍する小説にハマったためだ。 彼は自分の「臆病で行動力に乏しく、信念や意志力も無縁に生きてきた」人生と「人生における最大の失敗だった」と結論付ける夫人との結婚を反省し、残りの日々をハードボイルドな探偵として生きることを決意する。

ただ、はっきり言って、木野塚氏、憧れが強すぎるばかりに、その思いはまったく地に足が着いていない。

男と生まれたからには、一度でいいから、心から情熱を燃やせる生き方をしてみたい。納得できる仕事で人生を完結させたい。警察が見放した難事件を解決して週刊誌にのってみたい。テレビのワイドショーにも出演して、専門家の立場から保険金殺人の解説をし、それにできたら、ついでにワイドショーの美人キャスターと不倫だってしてみたい。(p.16)

などと夢想してしまうのだ。

しかし、そんな妄想じみた思いと裏腹に、彼の元に迷い込む数少ない依頼は、金魚の誘拐事件にはじまり、犬の恋愛騒動、菊の殺人ならぬ殺菊事件、猫の失踪事件と珍事件ばかり。 ハードボイルドに生きることの困難さを嘆きながら、ひょんことから秘書兼助手として採用した梅谷桃世を伴い、木野塚氏は入れ歯の奥歯を噛みしめながら事件に飛び込んでいく、というのが本書の骨子。

迷推理や珍質問を飛ばしまくったあげく、秘書兼助手の桃世の名推理や的確な質問を聞いて「助手の推理はすなわち所長の推理である」や「たった今質問しようと思っていた」とうそぶく木野塚氏がなんともおかしくて、「どこがハードボイルドやねん!」とツッコみつつ、ニヤニヤしながら読んでいたのだが、最終話「木野塚氏初恋の想い出に慟哭する」が木野塚氏のキャラと似合わない、なんとも物悲しいラストで締められていて、思わずほろっときてしまった。

引退後には南国で悠々自適の生活を送るというのライフプランを見聞するが、高齢者がどんどん増えていく日本社会においては、木野塚氏のように世のため人のため第2の人生を意欲的に生きるというのも良いんじゃないかなぁと思ったりした(木野塚氏がどれだけ世のため人のための役に立つかは別として)。

なお、2002年に単行本として上梓された続篇『木野塚佐平の挑戦』も創元推理文庫に収められる予定とのことだ。 期待して待ちたい。


木野塚探偵事務所だ

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書評/国内純文学