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2008-03-15(Sat) [長年日記]

_ 戦争を経済から斬る!── 戦争の経済学(ポール・ポースト/山形浩生)

各所で話題になっていたので読んでみたのだが、これはスゴイ本。

戦争を「巨大公共投資」と見なし、経済学的なアプローチで読み解こうとしている意欲作が本書。

硬そうなタイトルと全430ページという厚さにたじろぐ向きもあるかも知れないが、扱っている内容は経済学の初心者でも充分理解できる易しさだし(なにしろオレが分かったくらいだ!)、活字も大きいのでさくさく読み進めることができる。 ぶっちゃけ、図表や「点Aから点Bに移動すると〜となり、これをウンタラ曲線」云々というフレーズあたりの難しい部分は、読み飛ばしちゃってもOKだったりする。

それなりに長い間、軍事オタクをやっているが(わりに、水たまりのように浅い知識だが)、のっけから著者が提示する「戦争にかかる費用は年々安くなってきている」という視点には、目からウロコ。考えてみれば、軍事における革命(RMA)にしろ、本書においても触れられている民間軍事会社(PMC)にしろ、

「いかに効率良く戦争を遂行するか」==「いかに安く戦争を遂行するか」

を目的にしている訳なので、当然なのだ。これじゃ、軍事オンチのマスコミを笑えないよなーと、ちょっと恥ずかしくなってしまった。

だからといって、現在の戦争が過去の戦争と比べて「儲かる」ようになったかと言えば、全然逆で、経済的損失が大きくなってきているというのが本書の骨子なのだが、詳しくは本書を参照のこと。

戦争そのものに関する考察の他、本書では、軍隊における徴兵制と志願制の経済学的比較や、兵器調達の事例研究としての「統合攻撃戦闘機(JSF)」、自爆テロが起こるメカニズムなども解説しており、非常に示唆に富む内容となっている。さらには、邦訳版だけのボーナストラックとして、訳者(山形浩生)による日露戦争と自衛隊のイラク派兵に関する収支考察も含まれていて、これで1890円(税込)という価格は、お買い得といえるだろう。

心理学から戦争を読み解いた『戦争における「人殺し」の心理学』や、経営学から日本軍を考察した『失敗の本質』と並び、今後、戦争の本質を考える上で欠かせない一冊になるのではないかと思う。イチオシ。

本書で興味深かったことをメモしておく。

  • アメリカの戦車生産台数は、1918〜1933年で35台、1940年には309台、1943年には2万9500台。第二次世界大戦中には、のべ8万8430台。それに対し、イギリスは2万4800台、ドイツは2万4050台を生産した。(p.69)
  • アメリカ軍における戦闘/支援部隊の比率は非常に低い。たとえば2002年度には、陸軍では戦闘兵6万に対し、支援要員47万。空軍では1万6000人のパイロットに対し、支援要員は36万。(p.121)
  • 基地閉鎖にともなう地域コミュニティに与える経済的打撃は、僻地であれば大きいが、そうでない場合はそれほどでもない。(p.127-131) ← 良い悪いは別として、沖縄の在日米軍が撤退した時の経済的損失を考えてみると興味深い。
  • 徴兵制は軍隊の人材確保費用を引き下げる。それで浮いた防衛予算を福祉に回すため、スカンジナビア諸国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)は徴兵制を敷いている。(p.176)

なお、最後になるが誤植らしきものを発見。p.235に載せられている国防省日次契約報告書の

BAEシステムズ手無

って、

BAEシステムズ・テネシー

あたりの間違いじゃなかろうか。


失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
戸部 良一/寺本 義也/鎌田 伸一/杉之尾 孝生/村井 友秀/野中 郁次郎
中央公論社
¥ 800

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)
デーヴ グロスマン/Dave Grossman/安原 和見
筑摩書房
¥ 1,575

_ S-Fマガジン 2007年 12月号 [雑誌]

この号を飛ばしてしまっていて、今頃、読んだ。なんだか「罪火大戦ジャンゴーレ」の話が繋がらないなぁーとは思っていたんだけど、放置してしまっていたよ。

クリスマスSF特集ということなんだけども、あまり楽しめる作品はなかったかな。期待していたコニー・ウィリスの「ニュースレター」も、発表当時(97年)なら斬新だったんだろうが、今となっては手垢のついたネタだしなぁ。まぁ、スラップスティックなところは面白かったけど。

「家・街・人の科学技術」で取り上げられた新幹線N700系の、独特の先頭形状が遺伝的アルゴリズムで設計されたというのは、へぇという感じだった。