ぽっぺん日記@karashi.org
2008-02-08(Fri) [長年日記]
_
ルイザと女相続人の謎―名探偵オルコット〈1〉 (創元推理文庫)(アンナ マクリーン/Anna Maclean/藤村 裕美)
東京創元社様よりで本が好き!経由で献本頂きました。御礼申し上げます。
タイトルの「ルイザ」 とは、『若草物語』 の作者であるルイザ・メイ・オルコットのこと。オルコットが探偵役を務める一風変わったミステリー〈名探偵オルコット〉シリーズ開幕篇が本書。
舞台は1854年のボストン。 作家を目指していたオルコットが、欧州からの新婚旅行から帰国したばかりの友人ドロシー(ドッティ)の新居に呼ばれたことから物語ははじまる。 幸せいっぱいの新婚夫婦であるはずが、どうも様子がおかしい。 ドッティは悩みを抱えているらしく、次の機会にその話を聞く約束をするが、その時が訪れることは遂になかった。 ドッティの遺体が港に浮いているところを発見されたのだ。 遺族の付き添いとして検死に立ち合ったオルコットは、ドッティが他殺だったことを知る。 友人は誰に殺されたのか? その心にどのような悩みを秘めていたのか? オルコットは真相を探りあてるべく捜査を開始する──。
実は『若草物語』は読んだことがなく、4人姉妹が登場するくらいの知識がなかった。 読んだことがあるという妻にもあらすじを訊いたのだが、「4人姉妹で、主人公はジョーという名前で、えー、あとはどんな話だったかなぁー」と全く参考にならなかったので、予備知識ゼロで本書を読むことになった。
「甘々なストーリーなんだろうなぁ」なんて偏見を持っていたのだが、実際に読んでみたら、なかなかどうして、21歳の若き女性であるオルコットの視点から、19世紀半ばのボストンの風景やそこに生きた市井の人々、抑圧された当時の女性たちを丹念な筆致で描いている良作。
オルコットが行なう捜査手法は、名推理を働かせるというよりは、様々な関係者に話を聞きまくるという「足で調べる」タイプのものだ。 聴取相手からうんざりされながらも、話を聞き出す図太さも含めて、ちょっと刑事コロンボの捜査に似ているかも知れない。 時折、鋭い観察眼を働かせるが、それも自作の小説に生かすために培ってきたという理由付けがされていて○。
ストーリーは、オルコットの生涯と齟齬がないようにする制約上、冒険的要素がほとんどなく、少々盛り上がりに欠ける部分もなきにしもあらずだが、 事件に関わる人々は、いずれも思惑を隠している様子で、なかなか真犯人を推理するのは難しいのではないかと思う(ただ、先に巻末の解説を読んでしまうと、あたりをつけられてしまうので注意)。 ラストでオルコットが解き明かす謎は、19世紀という時代背景が重要なキーになっているもので、素直に「うまいなぁ」と感心させて貰った。
なお、歴史背景では、誕生したばかりのボストン警察が一般市民には、うさん臭く思われていたこと(それまでの治安維持はボランティアによる自警団に頼っていたそうだ)や、 あの時代にも司法解剖があったという点(ただし、立会人は道を歩いていて雇われた人)が興味深かった。 特に後者については、調べてみると面白そうなので、そのうち本を探してみようと思う。
おかしかったのは、偉大な理想主義者ではあるが、生活者としては失格のオルコット家の父親。 哲学者であり、南部の奴隷(そう、まだ奴隷制があった時代なのだ)の逃亡を助ける組織を作るなど、正義の人でもあるが、収入や生活レベルといった「ささいな」ことには全く無関心で、オルコットやオルコットの母親であるアッバ*1との「空気が読めない」会話には吹き出しそうになってしまった。
『若草物語』を知っていれば、本書のストーリーは、もっと楽しめるとは思うのだが、オッサンになって原作を読むのも恥ずかしい。 そんな訳で、巻末の解説で紹介されている映画版を見てみようかと思う。 1994年のジリアン・アームストロング監督した作品では、ウィノナ・ライダーが主役のジョーを務めているらしいし。えぇ、ウィノナ・ライダー好きなんですよ。うひ。
- アンナ・マクリーン
- 東京創元社
- 1050円
書評/ミステリ・サスペンス
*1 ちなみに、アッバは当時にしては、非常に進歩的な考えを持っていた女性だそうだ。





まで頂ければ幸いです。