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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-01-10(Thu) [長年日記]

_ 過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)(池田 信夫) 過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)(池田 信夫)

アスキー様より本が好き!経由で献本して頂いた。アスキー様および本が好き!プロジェクトに感謝致します。

エコノミストで、人気blog『池田信夫 blog』の著者でもある池田信夫氏が「ムーアの法則」を通じて、未来の情報技術と経済を展望しているのが本書。 ムーアの法則自体は知っていたが、それが経済に与えるインパクトという面は、ほとんど考えたことがなく、なかなか興味深く読めた一冊だった。

ムーアの法則とは、インテルの共同創設者であるゴードン・ムーアが1965年に提唱した「半導体の集積度は24ヶ月(1975年に18ヶ月に修正)で2倍になる」という予言だ。 この予言はほぼ当たり、この40年間で半導体の集積度と処理速度は2年ごとに2倍に上がり、コストは18ヶ月ごとに半分に下がった。 著者は、このムーアの法則によるイノベーションによって指数関数的に発達した情報技術が、いかに世界を変容させたかを様々な事例を挙げている。 いくつか例を引けば、コンピュータはコモディティ(日用品)化し、情報は大衆のものから個人のものへと変化し、資本は国境を越えて動くようになった。

思い返してみれば、私が初めて自分のPCを手に入れたのは約13〜14年前。 当時、DOS/V*1と呼ばれていたショップブランドのマシンで、CPUはPentium 90MHz、メモリは16MB、HDDは10GBくらいで約20万円程度だったと記憶している。 今となってみれば、ゴミにしかならないスペックだが、それでも、その頃、まだ主流だったNEC PC-98シリーズよりもかなり割安だったはずだ。 現在の、あの頃は高嶺の花だったノートPCが6〜7万円も出せば買えてしまう状況を考えると、なんだか頭がくらくらしてきてしまう。

さらにネットになると……もう筆舌に尽くしがたい発展ぶりだ。 今の20代前半より下の年齢の人に「昔のネット廃人は夜中の11時から朝の8時までは活動時間だったんだよ」と言っても怪訝な顔をされるかも知れない。 あったんだよ。テレホーダイというのが──と呟いてしまいたくなるが、昔話になってしまうので、以下略。

さて、ここまでが本書の前半で、後半から著者は日本の産業構造や電波業界の利権主義などによるイノベーションの阻害要因を斬っていく。

ただ、率直に言って、前半と比較すると、後半の説得力はかなり落ちると言わざるを得ない。 SIMロック解除による携帯電話業界の開放であれば、私も賛成できるのだが、 敵対的買収防衛策などの姑息な手段は使わず、日本の企業は外資にゴンゴン買収された方がいいという話になると、「果たして、本当にそれが良いことなんだろうか」と考えてしまう。 少なくとも、それは現在の日本に存在する経済問題のひとつ──所得格差をさらに広げる要因になるのは確実ではないだろうか。

著者の所得格差についての考え方は終章で述べられている。

所得格差の拡大している国ほど成長率も高い。(p.198)

つづけて、日本は所得格差が小さいため成長率が低い、と述べているが、現在の所得格差を「小さい」と見なすことに異論を唱える人も多いのではないかと思う。 さらに

全階層所得が上がっているかぎり、格差拡大は悪いことではない。(p.198)

と主張する。 確かにこの通りに進めば薔薇色であるのだが、この路線であるハイエク型経済政策を目指した小泉改革が理想通りに進まなかったからこそ、今日のワーキングプア問題があるのではないだろうか。個人的には納得しづらい。

いくつか異論を書いた通り、読む人により評価の分かれる本ではあるが、刺激を受ける一冊であることは間違いない。さらっと読める厚さであるにもかかわらず、濃い内容。値段も760円(税込)というお手頃価格であり、なかなかコストパフォーマンの良い本と言えるものと思う。


過剰と破壊の経済学

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書評/経済・金融

*1 本書にも登場する。

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