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2007-12-21(Fri) [長年日記]

_ 掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)(フィリップ リーヴ/Philip Reeve/安野 玲)

東京創元社様より本が好き!経由で献本して頂いた。東京創元社様、感謝致します。

六十分戦争により文明が荒廃した大地をエンジンとキャタピラを持つ都市が走り回り共食いをするという、ぶっ飛んだ世界で繰り広げられる冒険SF第二弾。

今年の星雲賞受賞作である前作『移動都市』(読書感想はこちら)も面白かったが、本書はそれを上回る面白さ。

前作から続く奇妙な世界設定、 ジェットコースターばりに繰り広げられる冒険活劇とどんでん返し、 そして、希望溢れるラスト(奥手に見えてトムもやるなと思ったのは私だけではあるまい)と、 文句のつけようのない傑作冒険SFに仕上がっている。 これだけデキがいいと、もしかすると、『移動都市』と本作で、二年連続の星雲賞受賞なんてこともあるかも知れない。

本書の登場人物では、なんといってもヒロイン、ヘスターがいい。 『移動都市』から2年あまりが経過して、恋人となったトムと共にアン・ファンの遺品である飛行船『ジェニー・ハニヴァー』号を受け継いて、飛行船乗りとして平穏な日々を送っているのだが、自分の容姿へのコンプレックスは消えず、常にトムが自分のもとを去るのではないかと恐怖を抱いている。 二人は騒動に巻き込まれ、ヘスターはその過程で嫉妬の炎をめらめらと燃やすことなるのだが、その姿がなんともかわいらしいと同時に、いじらしく、本書の読みどころのひとつとなっている (まぁ、持ち前の激しい性格から、その嫉妬がとんでもない事態を引き起こすことになるのだが、そこはご愛嬌)。

本書のもうひとつの読みどころは、各所にちりばめられた歴史に関するユーモアの数々だ。 歴史家ペニーロイヤルが開陳するアメリカ大陸の歴史(アメリカ大陸を発見したのはコロンブスならぬ、刑事コロンボだそうだ)や、 掠奪都市『アルハンゲリスク』の守り神(「鉄の女」と呼ばれた元英国首相サッチャー*1)などなど、 思わずニヤリとしてしまうものがばかりだ。 残念ながら、隠されたジョークの一部しか見付けられなかったのだが、歴史への造詣が深い人ならば、もっと楽しめるのではないかと思う。

本シリーズは四部作ということだが、つづく第三弾は本書から一六年後が舞台とのこと。 移動都市、反移動都市同盟、そして反移動都市同盟の過激派『グリーンストーム』の三つ巴の闘争はどうなるのか? トムとヘスターのその後は? と興味が尽きない。

つづきが楽しみなシリーズだ。


掠奪都市の黄金

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書評/SF&ファンタジー

*1 だと思ったのだが、違っていたら申し訳ない。