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ぽっぺん日記@karashi.org


2007-12-12(Wed) [長年日記]

_ 『君のためなら千回でも』(カーレド・ホッセイニ)

早川書房さんより本が好き!経由で献本して頂いた。早川書房様、感謝致します。

アフガニスタン出身で、アメリカに亡命し、現在、医師として働いている著者のデビュー作が本書。 アーティストハウスパブリッシャーズより2006年に単行本として刊行された『カイト・ランナー』(絶版)を改題し、文庫化したものだ。 個人的には、今年読んだ小説ランキングの中でも断トツNo.1の内容で、本年の締め括りとなるこの時期に、このような作品が読めて、本当に幸せだ。

主人公、アミールが亡父の友人、ラヒム・ハーンから一本の電話を受けたことから物語は始まる。 アフガニスタンから亡命し、現在はアメリカに住むアミールには、消すことのできない罪の意識があった。 ソ連軍侵攻前の平和なアフガニスタンの首都カブールで少年時代を送ったアミールは、事業に成功し、周囲から尊敬を集める父の息子として何不自由のない生活を送っていた。 しかし、彼は、兄弟同然に育った親友の召し使い、ハッサンに突如として襲いかかった暴力を自身の臆病から黙って見過すことしか出来ず、自己嫌悪に陥る。 その自己嫌悪から逃れるため、アミールはハッサンを遠ざけ、遂には卑劣な裏切り行為を働き、ハッサンを追い出してしまったのだ。 そして、ソ連軍侵攻。戦火から逃れるため、アミールと父はアメリカに亡命する。 祖国から遠く離れた地で、家庭を持ち、作家として成功たアミールだったが、ハッサンに対して行なった罪の意識から解放されることはなかった。 そんな彼にかかってきたラヒム・ハーンからの電話──ハッサンへの贖罪のため、アミールはタリバン支配下にあるアフガニスタンに戻ることを決意する。

激動のアフガニスタンの歴史を背景に、贖罪と許しの物語が展開されるのだが、 ラストシーンに託された、終わりのない冬はないという著者のメッセージには思わず感涙してしまった。

アフガニスタン人ならでは視点で物語を紡ぐ著者の筆致も見事だ。アミールが少年時代を過ごした活気に満ちたカブールと、長年続いた戦火により荒廃したカブールの対比も素晴しいし、カブールで子供たちの間で流行したという凧揚げ合戦や、アメリカに住みながらも昔から続く伝統を守ったパストゥーン人コミュニティの生活など、生きと描き出されている。

作中で、アメリカでは映画の結末を話すことは、アメリカでは"ネタばらし"の罪を犯したと非難され、アフガニスタンでは結末こそすべてであり、みんなそれを知りたがるというくだりがあるのだが、実は、私も後者のスタンスで、人から映画の話を聞く時には結末まで聞くし、自分が観た映画を話す時には、つい結末まで言ってしまうということがあり、「それ以上言うな」と制されることもある。「もしかすると、そこらへんの感覚はアフガニスタン人に近いのか」と思うと、なんともおかしかった。

本作は映画化されており、日本でも来年の2月に封切られるとのこと。 ハリウッドが製作した非ハリウッド『君のためなら千回でも』によれば、「物語の力だけでこれだけ観客を惹き付けたスタジオ映画は実に久しぶりではなかろうか」ということなので、ぜひ観に行きたいと思う。

今回は出版前の作品ということで、ゲラを製本したプルーフを献本して頂いた。 以前から「プルーフ」という名前だけは聞いたことがあって、どんなものなのか興味があった。生原稿に近いものを想像していたので、実際に手に取ってみて、思っていたよりも、ずっとしっかりしたもの(それこそ、そのまま書店に並べられるくらい)で、びっくりした。 プルーフで出版前の作品を読むという、ちょっと出版業界に入ったような気分にさせて貰う機会を与えて頂くと同時に 、本作のような素晴しい作品に触れる機会を頂いた早川書房様と本が好き! プロジェクトには、もう一度感謝したい。

本書は上下巻の文庫として、12月19日に発売される。 もし、『カイト・ランナー』が未読の方であれば、イチオシ。 決して後悔はしないはずだ。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫) 君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)
カーレド・ホッセイニ/佐藤耕士
早川書房
¥ 693

君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫) 君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫)
カーレド・ホッセイニ/佐藤耕士
早川書房
¥ 693


君のためなら千回でも

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書評/海外純文学

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