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ぽっぺん日記@karashi.org


2007-11-21(Wed) [長年日記]

_ 戦前の少年犯罪(管賀 江留郎) 戦前の少年犯罪(管賀 江留郎)

本が好き!経由での献本して頂いた。感謝。

少年犯罪が増加の一途を辿っているというのは、現在、常識のように喧伝されていることだが、実はそれが根拠のない幻想であることを喝破しているのが本書。硬いタイトルと重い内容に反して、著者の語り口は軽い上に皮肉たっぷりで、吹き出しつつ読了した。

少年犯罪データベースを主催している著者は調査・収集した戦前(具体的には昭和元年から昭和20年)の新聞記事をもとに、当時、いかに少年犯罪が多発し、また道徳が荒廃していたかを浮き彫りにしている。 本書で語られる犯罪は多岐に渡っているが、小学生がビジバシ人を殺し、若者が親や老人を殺しまくり、練炭での集団自殺もかくやという勢いで若者が自殺をし(なんと、その率、現在の3倍!)、生徒が教師に暴力をふるうことは日常茶飯事、逆に犯罪を犯す教師が横行したという事実を知ると頭がくらくらしてくる。

本書は、事件記事の紹介と著者の解説という形態で進められるのだが、著者のシニカルな視線と容赦のない見解が最大の特徴だろう。

たとえば、愛国教育との関連で昨今よく言及される戦前教育への回帰願望について、著者はこう述べている。

最近、戦前への回帰を唱える人がいるようですが、このような虐げられた若者が、既得権を持つ老人を殺して回るような時代が来てほしいということなんでしょうか。(p.174)

また、教育の理想像のひとつとして持ち上げられることもある旧制高校については、生徒たちが行なった、成人式で騒ぐ若者がかわらしいと思える蛮行の数々(現在であれば、逮捕者が出るのは確実だが、当時は不問に付された)を挙げ、こう扱き下ろす。

旧制高校世代や、街中で機動隊に石や火炎瓶を投げていた世代が、彼ら(引用者注:成人式で騒ぐ若者)を非難するのはどうもよくわからんことです。若いころに甘やかされて、おつむのネジが少々ゆるんでいたりするんでしょうか。(p.257)

著者の見解の中でも、特に秀逸なのが、二・二六事件と「皇軍」に対するもの。 前者について「税金ドロボーと言われ続けてきた抑圧に起因するニートによる犯罪」、後者については「勝敗よりも見てくれのカッコ良さやブランド価値を優先する女学生」と、まさに一刀両断の勢いで切り捨てていて、思わず笑ってしまった。

あとがきにおいて、著者は「昔がよかった」という根拠のなく考えることと同様に、「戦前はひどい時代だった」と検証もせずに考えることを批判している。

検証をしていないのなら、それは根拠なく誤った情報をやすやすと信じている人とまったく同じことです。(p.293)

実は、私もろくに調べもせず、ぼんやりと「少年犯罪が増加しているというのは単なる思い込みじゃないかなあ」などと考えていた人間なので、反省させられる言葉だ。

戦前への根拠のない幻想を打ち砕くとともに、 物事を調べる際、一次資料に当たることがいかに大切であるかを教えてくれる好著と言えるだろう。一読をオススメしたい。


戦前の少年犯罪

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