ぽっぺん日記@karashi.org
2007-10-24(Wed) [長年日記]
_
中国の危ない食品―中国食品安全現状調査(周勍/廖建龍)
本が好き!経由で献本して頂いた。これはスゴイ本。
近所のスーパーの野菜コーナーを見たところ、中国産と書かれた野菜を一つも見つけることができなかった。また、生魚コーナーからも中国産ウナギは完全に姿を消していた。消費者の間では「中国の食品は危ない」という意識は広く浸透しているようだ。
しかし、本書によれば、中国国内に目を向ければ、食品汚染の状況は「危ない」などというレベルを遥かに越えて、「致命的」といっても過言ではないものになっているという。
本書の著者は北京在住の中国人ジャーナリスト。天安門事件に連座し、3年間に渡る投獄されたという経歴を持ち、現在も当局に危険分子としてマークされているという。現在、中国政府は来年にオリンピックを控え、食品汚染に関して事実上の報道規制を敷いているが、自らの危険を冒してまで、真実を伝えようとする著者のジャーナリスト魂は、その経歴ゆえと言えるかも知れない。本書の原著は高く評価され、2006年度「ユリシーズ国際ルポルタージュ賞」を受賞している。なお、2003年に同賞を受賞したのが、去年殺害されたロシア人ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤの 『チェチェン やめられない戦争』だ。
本書が明らかにする食品汚染の実態は、まさに戦慄すべきものだ。日本の報道でも知られている「段ボール肉まん」(最終的には「ヤラセ」とされた事件であるが、著者によれば、中国政府による隠蔽であるという)や「人間の髪の毛を原料とした醤油」をはじめとして、数多くの事件が紹介されている。その一部を引いておこう
- 下水にたまった油、レストランの残飯に簡単な加工処理を施し抽出された油──「地溝油」が、小料理屋や屋台、またサラダ油として利用されている。地溝油の原料となるゴミを巡って、業者間で熾烈な争奪戦が起きているという。
- 赤身の豚肉が好まれるようになったために、赤身を増やすことを目的として、豚に喘息治療薬(塩酸クレンブレロール)を混ぜた飼料が与えている。人間がこの肉を食べると、深刻な中毒症状を引き起こす。
- 料理屋や飲食店は、リピーター客を増やすため、料理にケシ混入させている。客は長期間食用すると中毒症状となり、重症の場合、麻薬常用者になる。
- 有毒物質を含む粉ミルクによって、幼児の死亡したり、様々な障害を抱えるなどの事件が多発している。
なぜ、このような状況に陥ったのか。縦割り行政や取締り側と業者の癒着の他に、著者は中国国民が抱える心の荒廃──誰をも信じず、社会を信じず、国を信じず、明日を信じず、金儲けのためなら後先を考えず、友人親戚や世間の人々への迷惑などを考えず、資源の掘り尽くしを考えず、環境破壊を考えずに、無分別にやってしまう──を大きな原因としている。
実態を知れば知るほど暗澹たる心情になってしまう、中国国内の食品汚染だが、一条の光も見える。それが、先にあげた豚肉に含まれる塩酸クレンブレロールを簡単かつ安価に検出できる方法を開発した「江西中徳大地生物工程有限公司」だ。取締役社長である銭偉は自分のことを民族主義者だと言い、次のように述べている。
本当の愛国者であるなら、サッカーで負けたからといって物を投げるとか、ネット上で憂さ晴らしはしませんよ。ハイテクが国力が国力を決定する時代にあっては、技術向上に努力することが、わが民族の国際的な地位を引き上げる唯一の選択です。(p.78)
国は違えど、尊敬すべき心意気ではないだろうか。
訳者によるインタビューで、著者は中国国民の心の荒廃も憂えて次のように述べている
北京や上海のような大都会でも、普通の家庭で購読しているのはテレビ番組の新聞、いいところで夕刊紙です。読書する人が非常に少ない。読む本といえば金儲け成功法、仕事速成術、人の心理の読み方術のたぐいです。食べているものもゴミ、精神や心の糧もまたゴミなんです。(p.202)
日本の将来を考える上でも重く受け止める必要のある警句だろう。
折しも、現在、赤福餅の偽装問題が世間を騒がしている。 日中ともに食の安全が問われている今だからこそ読まれるべきと言える一冊だ。
- 周勍、廖建龍
- 草思社
- 1470円
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ





まで頂ければ幸いです。
マタタビ潔子の猫魂(ねこだま) (ダ・ヴィンチブックス)(朱野帰子)
殺す者と殺される者 (創元推理文庫)(ヘレン・マクロイ/務台 夏子)
Xに対する逮捕状 (創元推理文庫)(フィリップ・マクドナルド/真野 明裕)
一角獣の殺人 (創元推理文庫)(カーター・ディクスン/田中 潤司)
ジャンピング・ジェニイ (創元推理文庫)(アントニイ・バークリー/狩野 一郎)