ぽっぺん日記@karashi.org
2007-09-13(Thu) [長年日記]
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偽書「東日流(つがる)外三郡誌」事件(斉藤 光政)
『本の雑誌』9月号の特集「エンタメ・ノンフの秋!」で絶賛されていたので読んでみた一冊。 評判通りとてつもなく面白くて、一晩で読み終えてしまった。
「東日流外三郡誌」偽書問題の発端となった記事を書いた東奥日報社の記者が、その始まりから終焉までの軌跡を描いたノンフィクションが本書。 「東日流外三郡誌」と聞いて、ピンとくる人は、オカルト好きか、超古代史好き、 または俺のようなトンデモ好きな人に違いないと思うが、ピンとこない人でも大丈夫。 個人的には、今年読んだノンフィクションでもベスト級の面白さなので、ふつーの人が読んでも最高に面白いと太鼓判を押しておく。
「東日流外三郡誌」とは何か。Wikipediaから引用しておこう。
『東日流外三郡誌』は、青森県五所川原市在住の和田喜八郎が、自宅を改築中に「天井裏から落ちてきた」古文書として登場した。「和田家文書」とも呼ばれる。数百冊にのぼるその膨大な文書は、古代の津軽地方には大和朝廷から弾圧された民族の文明が栄えていた、という内容で、有名な遮光器土偶の姿をした「荒覇吐(アラハバキ)」神も登場する。──東日流外三郡誌 - Wikipediaより引用
このように歴史好きには大変魅力的に見える「東日流外三郡誌」なのだが、問題は、これが「史上最大」とも称された偽書だったということだ。
本書には、偽書であることの証明が大量に登場するのだが、そのいくつかを挙げておこう。
- 「闘魂」(アントニオ猪木のキャッチフレーズ)や「民活」(民間活力や民間活性の略)といった戦後の言葉が使われている。
- すべての文書が発見者と同じ筆跡。
- ほとんどが毛筆ではなく、筆ペンで書かれている。
と、こんな具合で、こんな物を信じるということ自体、本書に登場する地元女性の言葉を借りれば、 「はんかくさい」(津軽弁で「ばからしい」の意)こと、この上ないと感じられる(個人的には「闘魂」に笑った)。
「東日流外三郡誌」のお粗末なデキと、擁護派(いわゆるビリーバー)が唱えるトンデモな理屈 *1 を笑い飛ばしながら読むのも一興だが、 「東日流外三郡誌」によって被害を受けた人々の姿も明らかにされるため、笑ってばかりもいられない。
なぜ、素人目に見ても偽書と思えるような代物を信じ、そこに大金をつぎ込むようなことをしたのか。本書は、
- 町・村おこしのため、「東日流外三郡誌」を安易に利用しようとした自治体
- 「東日流外三郡誌」を金の成る木と見なし、売れさえすればいいという姿勢で持ち上げたマスコミ
という 旧石器捏造事件 にも通じる原因と共に、北日本の人々の「大和朝廷に征服された」というコンプレックスがあることを指摘する。 東北人ではない身には想像することしか出来ない、なんとも重い分析であるが、エピローグに登場する民族考古学者の、青森県に三内丸山遺跡が 発見されたことを受けての言葉、
三内丸山遺跡という、日本の基層文化につながる素晴しい場所、誇れる遺産がある以上、もう、青森県民や東北の人たちには『外三郡誌』なんて必要ないんじゃないか(p.315)
が救いだ。
最後に、本書で唯一残念だった点を挙げておく。 著者は、とり・みきの『石神伝説』の登場人物の一人である新聞記者のモデルとなったそうなのであるが、 そうであればこそ、本書に、とり・みきの解説を付けて欲しかった。
とり・みきファンには、ちょっと残念なところもなきにしもあらずだが、ノンフィクション好きには文句なしにオススメしたい一冊だ。
*1 その理屈が、UFO信奉者と同じようなものばかりで、逆に驚かされる。唱えるトンデモ理論に相違はあれ、根っこは一緒という証左だろうか。




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