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ぽっぺん日記@karashi.org


2007-09-09(Sun) [長年日記]

_ 聖灰の暗号〈上〉(帚木 蓬生) 聖灰の暗号〈上〉(帚木 蓬生)

本が好き!経由で献本して頂いた。

キリスト教の一派であるにも関わらず、ローマ・カトリック教会によって異端とされ、12世紀から13世紀にかけての弾圧の末に滅ぼされたカタリ派を扱った小説が本書。これが初・帚木蓬生作品なのだが、非常に面白くて一気に読んでしまった。

カタリ派を研究する歴史学者、須貝は、南仏の地方図書館で、偶然、カタリ派に関連する地図を発見する。 地図はカタリ派弾圧について触れており、弾圧について著した手稿の存在をほのめかすものだった。 それが事実であれば、今まで知られることがなかったカタリ派の聖職者や信徒の生の声を伝える革命的なものであるかも知れない。 しかし、須貝が地図の存在を学会で発表したことにより、それが世に出ることを阻もうとする勢力が蠢き出すことに──。

というのが本書のあらすじ。

本書は、須貝が仲間と共に手稿を探す現代パートと、書き手を通してカタリ派への過酷な弾圧とカタリ派の実態を浮き彫りにする手稿パートから構成されている。現代パートは、カタリ派についての説明と、エンターテイメント小説として成立させるために存在している、言わば、おまけのようなものであり、本書のメインは、あくまでも手稿パートにある。

手稿パートでは、異端審問に立ち会う通訳である書き手が、カタリ派に対する弾圧と虐殺を目撃することにより自分が信じるカソリックへの疑念を深め、カタリ派聖職者と対話することにより、徐々にカタリ派の持つ信仰へと目覚めていく様子が、まるで当時を生きた人物の手によるものではないかと錯覚させる見事な筆致で描かれている。まさに一級の歴史物語と言って過言ではない。

本書の弱点は、現代パートにある。作者の主眼は、ここにはないとは言え、ミステリー小説として読んだ場合、残念ながら、かなり無理がある展開となっていると言わざるを得ない。

まず、犯人たちが連続殺人を行なった理由が理解できない。顔を目撃されたということが本書の中で理由としてあげられているが、「マスクなどで顔を隠さなかったのだろうか?」と疑問を持った。少なくとも主人公の一人を誘拐した際には、覆面をしていたようだし、覆面姿を見られても殺害しようとはしなかった。また、ラストで真犯人が判明する場面も、自分から名乗り出ているようなもので「こいつはバカだろうか?」と思ってしまった。

そして、一番大きな疑問が、700年前の虐殺の事実を隠すために、現代で殺人を犯すだろうか? という点だ。たしかに、カタリ派の弾圧についての新資料が出てくればカソリック教会には打撃だろうが、現代で殺人を犯したことが露見することに比べれば、まったく大したことではないのではないだろうか。それに、本書を読んだ限りでは、カタリ派に対して過酷な弾圧が行なわれたということは、常識とまでは言わないまでも、かなり知られているようなことなので、今更隠したところでどうしようもないようにも思えるのだが……。

現代パートに関しては、残念ながら及第点とすることは出来ないが、手稿パートは、真の信仰とは何かを問う、まぎれもない傑作である。一読を強くオススメしたい。

なお、オクシタニア〈上〉 (集英社文庫)(佐藤 賢一) オクシタニア〈上〉 (集英社文庫)(佐藤 賢一)も同じカタリ派について書いた小説だそうである。次の機会に読みたいと考えている。

聖灰の暗号〈下〉(帚木 蓬生) 聖灰の暗号〈下〉(帚木 蓬生)


聖灰の暗号 (上)

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書評/国内純文学

参考

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