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ぽっぺん日記@karashi.org


2007-08-03(Fri) [長年日記]

_ グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ](ニコラス サリバン/東方 雅美/渡部 典子) グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ](ニコラス サリバン/東方 雅美/渡部 典子)

「本が好き」プロジェクト経由で献本して頂いた本。

「右手に理想、左手に算盤」という言葉をこうも感じさせる本はないのではないだろうか。

今、世界の発展途上国で携帯電話が爆発的に普及している。その広がりは、固定電話がなかった地域だけではなく、電気さえ通じていない地域、 1日2ドル未満で生活せざるを得ない貧困層にまで及び、地域の経済を活性化する大きな要因となっている。 この巨大な波の発生源となったのが、バングラデシュの携帯電話ビジネス「グラミンフォン」だ。 本書は、世界の発展途上国の中でも最貧国に位置するバングラデシュで、どのようにグラミンフォンが携帯電話ビジネスを 成立させたかを明らかにすると共に、プロジェクトに関わった人々の情熱、そしてバングラデシュをはじめとする発展途上国の 可能性のある未来を読む者に感じさせるノンフィクションとなっている。

グラミンフォンとはなにか。本書の冒頭から引用しておこう。

バングラデシュの1億4800万人の人口の大多数は農村部で暮らしている。そこにグラミンフォンは(徒歩圏内に置かれた)25万台のビレッジフォンを通じて1億人に通信手段を提供してきた。ビレッジフォンを保有するのは、グラミン銀行からマイクロクレジット(小規模融資)を受けた女性起業家たち。「テレフォン・レディ」と呼ばれる彼女たちは、ビレッジフォンを村人たちに使ってもらい、使用料金による収入でローンを返済している。年間所得は750ドル。バングラデシュ人の平均所得のほぼ2倍だ。(p.17)

本書は二部構成となっている。

バングラデシュよりアメリカに移民し、ベンチャーキャピタリストとして働いていたイクバル・カディーアが、 貧困にあえぐ祖国の人々の助けとなる、グラミンフォンの原型となるアイデア──「携帯電話を牛のように使えばいいじゃないか」を 思い付き、それを具体化するために奔走、 貧困層を対象にした低金利の無担保融資(前掲のマイクロクレジット)を行なっているグラミン銀行の創設者ムハマド・ユヌスや、 ノルウェーの通信事業者テレノールの協力を得て、 遂にはグラミンフォンを事業として成立させ軌道に乗せるまでを描いたのが第1部。 なかなか集らない資金、腐敗した政府、電話という既得権益を手放そうとしない国営電話会社といった様々な困難を乗り越え、 グラミンフォンを事業として成立させていく過程は、非常にエキサイティングだ。

つづく第2部では、グラミンフォンの成功を受けて、バングラデシュの他、フィリピンやアフリカなど発展途上国に爆発的に広まった携帯電話が、 それらの国々の経済にどのような影響を及ぼしているかを解説している。携帯電話が通話だけでなく、モバイルバンキングや、M(モバイル)コマース、さらには、 買い物の際の支払いのための電子マネーとしてまで使われているという現実には驚かされる。日本の携帯電話サービスを超えていると いってもいいだろう。

また、第2部では、グラミンフォンの発案者、カディーアのその後も語られる。カディーアは、グラミンフォンが軌道に乗った後、グラミンフォンを離れ、 現在、バングラデシュの電気が通っていない地域に、スターリングエンジンによる小型発電所をビレッジフォンのように普及させていくというビジネスを 立ち上げようとしているとのことである。発電所に使われる燃料は牛の糞から作られるメタンガスだ。カディーアは言う。「私は牛のことを忘れていない」。

注意しなければならないのは、グラミンフォンにしろ、カディーアが新しく立ち上げようとしている発電所事業にしろ、それらは援助ではなく、 あくまでもビジネスであるという点だ。 *1 これが冒頭で「右手に理想、左手に算盤」と書いた理由だ。

著者が指摘するのは、ODAをはじめとする外国の援助が国や国民のニーズに直結することはほとんどなく、市場を歪めてしまい、逆に 経済発展の阻害要因とさえなるということだ。本書では、発展途上国の発展のためには、経済を動かすための外燃機関となる三つの要素────「IT」「現地の起業家」「外国人投資家」が必要だと繰り返し説いている。グラミンフォンをはじめとする発展途上国における 携帯電話ビジネスが成功した原因もこの三つの要素が揃ったからこそと言えるだろう。

我々の日常となり、そのありがたみを実感することがほとんどなくなった、ITの本来の意義──低コストで、情報流通の物理的な限界を超える──を再確認 することができた良書。 すべての人にオススメしたい一冊だが、特にSEやプログラマなどITに多少なりとも関わりのある人が読めば、仕事についての情熱を新たにすることができるのでは ないかと思う。

なお、「バングラデシュに来た人は2度泣く」という故事にかけたラストの一行には、思わず感涙しそうになったことも付記しておく。


グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換

  • ニコラス サリバン、東方雅美/渡部典子
  • 英治出版
  • 1995円
Amazonで購入
livedoor BOOKS
書評/経済・金融

*1 実際、カディーアもグラミンフォンを離れた後、グラミンフォンの株式を売却して利益を上げている。ただ、それを発電所ビジネスのための資金にしているというところは、さすがだ。

_ LL魂のチケットを用意した

明日忘れたら、目も当てられないので。

っつーか、公式タグを使ってみたかっただけ。

_ 今日のできごと

  1. ちょっと早起き。暑くて目が覚めただけ。
  2. 再帰的なRubyコード書いたらバグってて、えれー結果が出た。
  3. 帰りの電車で『S-Fマガジン 2007年7月号』読了。
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