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2007-07-06(Fri) [長年日記]

_ 『不都合な真実』のポスターって、伊藤潤二の『うずまき』ぽくね?

不都合な真実

火葬場の煙が渦を巻くシーンにくりそつ。

_ ミサイルマン―平山夢明短編集(平山 夢明)

同じ著者の『独白するユニバーサル横メルカトル』に負けず劣らず、厭な話が満載の短篇集。ホントにひどいですよ!(注:誉め言葉)

通勤電車内で読んだんだけど、相変わらずのグロ描写の連続で、ちと隣りの人の目が気になったり。これが鞄に入っている時に、なにかの間違いで警察のご厄介になるハメに陥ったら、すげー悪印象を与えそうだよねぇ。

ちなみに、カバー画は『独白するユニバーサル横メルカトル』に引き続き、ベクシンスキー。画集を買おうかと思っているんだけども、妻が嫌がりそうなので、ちと躊躇している。

本書の収録作は、下記の七篇。

  • テロルの創世
  • Necksucker Blues
  • けだもの
  • それでもおまえは俺のハニー
  • 或る彼岸の接近
  • ミサイルマン

気に入った作品をピックアップしておく。

『けだもの』

〈狼男だよ〉

というセリフにニヤニヤ。言わずと知れた、平井正和へのオマージュですな(とか言いつつ、実は、平井正和、読んだことなんだけどな!)。

『枷』

本書の収録作のベスト。詳細な人体破壊描写に胃がでんぐり返りそうになりながらも、麻薬的に読み進めてしまう傑作。殺人について頓珍漢な俺理論を展開する文化人を登場させるあたり、なんとも人が悪い。

『或る彼岸の接近』

俺の大好きなクトゥルフもの。他の収録作とは全く違う語り口が著者の作風の広さを物語っている。タクシーで次々に化け物を運ぶ、というのが、なんかのオマージュになっている気がするんだけど、思い出せん。

『ミサイルマン』

HIGH-LOWSの『ミサイルマン』歌詞で始まる表題作。こっちも詳細な人体破壊描写があり、やっぱり、胃がでんぐり返りそうになった。

しかし、ミサイルマンって、あんまり内容に関係なくね? いや、俺もミサイルマン、好きだけど。

_ 自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝(レスリー デンディ/メル ボーリング/C.B. モーダン/Leslie Dendy/Mel Boring/C.B. Mordan/梶山 あゆみ)

artonさんが推薦されていたので読んでみた。*1

医学や科学の発展のために、自分たちの体を実験台にした人々の10個のエピソードを集めたのが本書。

ユーモラスなタイトルとイラストに騙されそうになるが、笑い話ではなく、至って真面目な内容だ。彼らは、人間がどれだけの熱に耐えられるかを試すため高温室に入り、消化のプロセスを調べるため、様々なものを飲み込み、また吐き出し、伝染病の原因を調べるため、患者の血を自分の体内に入れ、呼吸のプロセスを知るため、一酸化炭素から毒ガスまで様々な危険な気体を吸い続ける。

自分の命を賭してまでの実験に、彼らを突き動かしたものは何なのか。それは「今すぐ知りたい」という知的好奇心と、人々の生活をより良くするという使命感だ。彼らの命知らずの試みがあるからこそ、今の科学や医学の発展がある。知られざる偉人伝と言ってもいい一冊だ。

個人的に印象に残ったエピソードが、人間が隔離空間で生活した際の影響を調べるため、131日間を、たった一人、洞窟内で過ごしたステファニア・フォリーニのものだ。彼女は強い精神力で、その実験を耐え抜いたが、同様の実験に参加した被験者は精神のバランスを崩す者、自殺する者が多発したという。人間がいかに環境や社会と強く結び付いているかを示すエピソードだ。

なお、唯一の日本人として、サナダムシを自分の腸内で飼った藤田紘一郎氏が、著者あとがきでほんの少し触れられている。藤田氏の著作は未読なので、読んでみたくなった。

訳者あとがきによると、原書は子供向けの書籍として出版されたそうである。平易な言葉遣いで書かれているので、小中学の夏休みの読書感想文のネタとしてもよいのではないだろうか。ただし、取り扱いにはご注意を。訳者もこう書いている。

良い子はけっしてまねをしないように。(p.206)

ちなみに原書のタイトルGuinea Pig Scientistsのguinea pigというのは、モルモットのことだそうだ。つまり原題は、ずばり「モルモット科学者たち」。うーん、邦題の方がセンスは良い気がするかも。

*1 ついでに書くと、『本の雑誌』の「ミミ中野のこれいただくわ」でも紹介されていた。