ぽっぺん日記@karashi.org
2007-03-03(Sat) [長年日記]
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ひまわりのかっちゃん(西川 つかさ)
「危ないかなー」と心配しつつ、電車内で読んだところ、案の定、涙が流れ出すのを必死に堪える羽目になった傑作。非常に読みやすい文章な上、漢字にもふりがなが多く振ってあり、小学校高学年だったら充分に読める内容なので、お子さんにも、ぜひ読んで欲しい本。もしかすると、元々、児童文学だったりするのかも知れないが、とにかく老若男女問わず、感動できる傑作だと太鼓判を押しておく。
現在、台本や漫画の原作、小説などを書くことを生業にしている著者の小学校時代の自伝なのだが、実は、著者は小学校5年生まで、ひらがなを書くことができず、1桁の足し算もできない、特殊学級の生徒だったのだ。しかし、そんな状況が、5年生の春休みに転校した学校で著者の人生の師とも言える、森田先生に出会うことにより一変する。その春休みの間、森田先生は著者を根気よく個人指導し、著者は「薄皮が一枚一枚剥がれていくように」世界の認識を新たにしていくのだ。
森田先生が溢れんばかりの情熱を著者に注ぎ、著者が変わっていく、二人の出会いから始まる春休みの2週間こそ、この小説の真髄であると言ってもいい部分だと思う。初めて著者が森田先生に出会い言われた、「字書けながったり、算数がでぎないごとなんか、なーんも恥ずかしがるごとないんだよ」という言葉こそ、本書が伝えたいことを的確に表したものだろう。
なお、著者に考えようによっては、ずいぶんとひどい嘘をついたり、父方の実家に泊まりにいった折に居心地悪い思いをする著者を慮らなかったりと、あまり良い感じではないようにも描かれる著者の兄ではあるが、時計の読み方が分からず、母親に折檻されそうになる著者に、影から答えを教えるシーンには、別に同じようなことがあった訳ではないのだが、自分と弟をオーバーラップさせて涙が滲んでしまったことも付け加えておく。
教育問題については、ほとんどなにも知らない、まったくのド素人なのだが、小学校の教諭をしている知人からは、最近は書類仕事が大量にある上、会議も頻繁に開かれるので、なかなか生徒と話したり、遊んだりする時間がないとの話を聞く。教師の不祥事が頻繁に起き、教師の質の低下が叫ばれる昨今ではあるが(もちろん、子供を教え導く教師が犯罪を犯すなどということは言語道断なことである)、教育現場を知らない会議の場で決定された方針が、現場の教師に押し付けられた結果、森田先生のような情熱を持つ人々の熱意を押し潰し、良い先生と出会える子供たちを減らすような事態にだけはなって欲しくないと切に願う。
- 西川つかさ
- 講談社
- 1365円
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