ぽっぺん日記@karashi.org
2008-01-05(Sat) この日を編集
_ [軍事][読書感想]
インテリジェンスや外交に関する本を矢継ぎ早に上梓している佐藤優氏と、元韓国海軍少佐で日本へ機密情報を流したとの罪で逮捕、投獄された経験を持つコウ・ヨンチョル氏の対談集。
対談は、双方が経験した国策捜査や日韓におけるインテリジェンス、北朝鮮問題など多岐に及ぶのだが、その中でも面白かったのが、在韓米軍が行なっている対北朝鮮インテリジェンス。 コウ氏によれば、U-2三機を8時間交代で休戦ライン近隣に飛ばしているとのことだが、その通信傍受(盗聴)能力は「金正日のほんの些細な動き、たとえば息の音まで」感知できるほどだという。*1
また、北朝鮮工作機関についても触れられているのだが、その設立に関わったのは、旧帝国陸軍中野学校の出身者との話が書かれていて驚かされる。潜入工作員や偽ドル札など北朝鮮工作機関が行なっている作戦には、中野学校のノウハウが使われているとのことで、それに対処するためにも、もう一度、中野学校を見つめ直す必要があると提言されている。
おかしかったのが、コウ氏が語る海軍特殊部隊隊長時代の経験。 「特殊部隊」と聞くと、エリートを想像するが、実際は
異動してきた兵士のほとんどは、正規部隊で事故を起こしたり、いわゆる荒っぽい連中でした(p.51)
とのことで、まるで映画『シルミド』の世界なのだが、さらに、
指示命令に従わない兵士や、兵士同士のトラブルに対しては、拳銃を発砲して威嚇することもありました(笑)(p.52)
なんてこと話もあって、「いったい、どんな『特殊』部隊だよ!」とツッコミを入れたくなる。 ちなみに、コウ氏によれば、寝るときにはいつも拳銃を枕元に隠していたとのことだ。
ページ数(204ページ)の関係もあって、内容にそれほど深みはないが、インテリジェンスに興味がある人もしくは佐藤優ファンであれば、面白く読める一冊ではないかと思う。
*1 ただ、実際に行なわれているアメリカの対北朝鮮外交を考えると、ホントかよ、と眉に唾をつけたくなる話ではある。
2009-01-05(Mon) この日を編集
_ [読書感想][軍事]知られざる海上保安官の活躍を浮き彫りにする一冊──
これはスゴイ本。
海上保安庁といえば、海の警察・消防といえる組織である。 最近の『海猿』の大ヒット(コミックも読んでいないし、映画も見ていないので実はよく知りません)で、海難救助活動がとみに有名になった。 しかし、一方でその警察活動はあまり注目されてこなかった。
海保の特殊警備部隊SSTの隊長を勤めた著者が海難救助活動から、これまで語られてこなかった犯罪捜査、領海警備までを浮き彫りにしているのが本書である。
海保は緊急車輌を持たないため、陸上では緊急時でも制限速度を守った運転をしなければならないという、なんとも情けない事実も書かれているが、基本的にはプロフェッショナリズム溢れる海上保安官たちの姿を感じとれる一冊になっている。
本書の中でも特に目を引くのが、1992年に行なわれた「あかつき丸」によるプルトニウム輸送の警備活動である。 本書を読むまで知らなかったのだが、「あかつき丸」には著者を含む武装した海保の特殊部隊員たちが乗り込んでいたそうである。 彼らは米海軍特殊部隊SEALsによって実技訓練を受けた。 そのアレンジをしたのが船舶振興会の笹川良一というのだから、さすがというべきだろうか。
「あかつき丸」の警備については、高度な訓練と装備を持つ敵対勢力に襲撃を受けた場合には、護衛に失敗する可能も考えられた。その時のために自沈も選択肢のひとつに入っていたということである。
個人的に非常に面白いと感じたのは、「あかつき丸」の帰国に際してのマスコミ対策。 当日、東海村で「あかつき丸」の帰国を待ち受けていたマスコミに流されたひとつのニュースがあった。 それは皇太子殿下御成婚の発表だった。 青天の霹靂のニュースを受けて、一斉にマスコミは引き上げたという。 実は、これは政府による報道コントロールだったそうだ。 なんとなく無策と考えがちな日本政府であるが、やはり裏ではそれなりにしたたかな手も打っているのである。
海保に関する知識の他、特殊部隊の様々なテクニックや、MP-5をはじめとするサブマシンガンや防弾ジャケットなどの装備品に関する率直な意見なども読むことができる。 特殊部隊の基礎的な知識を得るための本としてもオススメ。
本書読了後、巻末の著者略歴を見て驚かされた。 著者は海保を退官後、ロンドンに拠点を持つ多国籍PMC(民間軍事会社)、アーマーグループに所属しているそうである。 アメリカでは特殊部隊のオペレータがPMCに引き抜かれることが問題になっていると聞くが、軍事の民営化という波は、日本の特殊部隊にも決して無縁ではないことを改めて思い知らされた。
2010-01-05(Tue) この日を編集
2012-01-05(Thu) この日を編集
_ [書評]『幻夢の時計』──全裸のタイタス・クロウがコナンばりに大暴れする〈タイタス・クロウ・サーガ〉第3弾。ラムレイ先生、どこまでもついていきます!
正月前に読み終わっていたんだけど、すっかり書評を書くのが遅くなってしまった。
ブライアン・ラムレイによるクトゥルー神話作品〈タイタス・クロウ・サーガ〉シリーズ第3弾。前巻『タイタス・クロウの帰還』から3年ぶりの登場である。
前巻の書評の最後は
本書では見られなかったタイタス vs CCDの激突と〈ウィルマース・ファンデーション〉の活躍が読めることを期待したい。
なんて感じに締めてみた。そして、遂に本書が刊行された。
期待半分、恐しさ半分。そんな気持ちで表紙を開いてみた本書だが、実際に読んでみたら「コズミックホラー? なんだそれー!」ってな感じに、こちらの予想をぶっ飛す斜め上のストーリーに悶絶。ラムレイ先生、色々な意味ですごいです。
盟友タイタスからの誘いで、時空往還機を駆り旧神の国エリシアに向かっていたアンリ・ド・マリニー。旅の途中、ド・マリニーは旧神クタニドから、タイタスとタイタスの恋人にしてクタニドの娘、ティアニア姫が邪神により囚われの身となっていることを知らされる。二人が捕えられているのは〈夢の国〉──限られた者だけが眠りの中で到達できる国だった。クタニドはド・マリニーには〈夢の国〉に赴ける〈夢見人〉としての能力があることを告げ、二人の救出を命じる……。
〈夢の国〉といえば、クトゥルー神話ファンであればご存知、ラヴクラフトの「未知なるカダスを夢に求めて」に登場する彼の地。
そこを舞台にどんな物語が展開するかと思いきや……全裸のタイタス・クロウが短剣片手にコナンばりに怪物と死闘を繰り広げ、時空往還機がビームを発射しまくるヒロイックファンタジーなんですな。
活躍を期待していたウィルマース・ファンデーションも、プロローグに2箇所ばかり登場するだけ。
もうコズミックホラーなんてものとは全然別の次元にいっちゃってます。
ただ、面白くないかといえば、狭義な意味でのクトゥルー神話という枠にはめなければ、それなりに面白いかなーという感じ。〈夢の国〉の設定もしっかりしてるし。
まぁ、今や、萌えを前面に押し出したクトゥルー神話なラノベやガイドなんか出ているしね。固いこと言いっこなしということで。
ラムレイ先生、どこまでついていきます!

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